不調の高橋光成が捕手・古賀悠斗と見つけた新境地。「球選びがうまくできた」。【Lions report】
ちょうど1ヶ月前のことだった。
7月1日の対ソフトバンク戦。西武のエース・高橋光成は5回を投げて8安打4失点(自責3)で降板。黒星はつかなかったものの、相手打線に攻略されたに等しかった。
翌日、その試合について振り返ってもらうと危機感たっぷりに高橋はこう話したものだった。
「完全にストレートを狙われていましたね。8本中5本がストレート。クセがバレているのか、配球が読まれているのか」
そう言って首を傾げた高橋はエース特有の壁にぶち当たっていた。
3年連続の開幕投手。エースとして迎えた今季、高橋は好調な滑り出しでシーズンをスタートした。開幕4戦で3勝0敗。防御率は1点台を切った。
チーム状態が決して良いチームではなかったから、その後、勝敗は停滞したものの、防御率は1点台をキープしていたのである。
それほどの成績を残せば、他チームは研究する。エース高橋対策に、あの手この手で策を練ってくるようになったのだ。昨今はデータ解析などもしてくるから好投手ほど弱点を炙り出されるのだ。
いわば、7月1日の頃の高橋にはそうした「今までのようにはいかない」ちょっとした壁を感じていた時だった。
「交流戦の広島は左打者を並べてきたり。これまでとは違うようになってきたなとは感じています」
課題はストレートだった。
この球種そのものの質を上げることも大事だったし、読まれないようにすることも考えなければいけなかった。幸い、器用な高橋はさまざまな球種を操る。それも、球速を変えることもできるから対策はすぐに効果を出した。
実はその7月1日のソフトバンク戦も試合の途中から配球を変えるなどして、糸口は見えていたのだ。
オールスターブレイク前と後で2試合連続完封。
登板間隔が空いたことで、少し体の負担が減ったこともあったが、完璧すぎるほどのピッチングだった。
そうした過程がある中で、8月1日のソフトバンク戦を迎えた。この一戦はあらゆる面で高橋にとって貴重な意味を持っていた。
初回から快調に飛ばしてきた高橋だったが、先頭の牧原大成に投げ込んだプレーボール直後の初球はスプリットだった。ストレートは1球のみで料理。その後、近藤健介、柳田悠岐に連打を浴びるも、中村晃にはストレート勝負で右翼フライに抑えたのだった。
ただ、この日の高橋は過去2戦に比べると調子は良くなかった。ストレートの球速は150キロ近くまであったし、変化球は切れていたが、制球が定まっていなかった。事実、2〜4回まで連続で先頭打者を四球で歩かせている。
しかし、その後を許さなかった。圧巻は3回裏、先頭の甲斐拓也を四球で歩かせた後、1番からの3人を連続三振で切ったのだ。このイニングで見せたのは外のスライダーを左バッターのアウトコースに投げ込んだことだ。カウントをとりにいくことも決めにくることも両方あったが、これまでの高橋には見られない配球だった。
これまでの対戦を反省にして、配球を変えてきたようでもあった。
しかし、それは事実ではなかった。
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