限界突パ

「バントができる20人を選んだ」U-18侍ジャパン馬淵史郎監督の発言が日本の野球界全体に意味するもの。

U -18W杯が開幕しました。
侍ジャパンのメンバーは、この夏の甲子園を沸かせた慶應義塾の丸田湊斗選手や甲子園で2本塁打をマークした森田大翔(履正社)選手、大阪大会決勝で敗れた大阪桐蔭の前田悠伍選手などが選ばれています。

当然、大会での好成績が期待されますが、開幕前からU−18指揮官の力量を疑問視する声は少なくありません。

それはメンバー発表記者会見で、馬淵監督が語った言葉に起因しています。

「バントができる20人を選びました」

この言葉尻だけを考えると「せっかくの世界大会にバントをしにいくのか」とただただ愕然とするのみですが、前回大会で勝てなかったことも踏まえての選択。つい先日まではてしなく飛ぶ金属バットを使用していた高校球児に木製で同じようにバッティングをしろいうのは無茶な話で、昨年の敗戦を踏まえての選手選考になったと見るのが当然でしょう。

ただ、私自身、ここで思ったのは、高校野球指導者の多くは勝利に追いかけられてしまうと思慮が狭くなってしまうのだなということです。

U−18世代で勝つことは自信になるとは思う。しかし、この大会の価値とは勝利を絶対的に得にいくことではなく「現在地」を図る機会であると思うのです。現時点の最高メンバーで戦い、どこまでの力があるのか。勝つことと、負けてしまうことによって、日本野球の現在地を知る。個々においても、課題を突きつけられるいい機会となり、次のステージへ向かうための財産としていく。

そうであるのに、持ち前の力量では勝てないと諦めて「弱者の兵法」に力点を置くことは野球界にとってプラスには働かないと思うのです。ややもすると、勝つことがマイナスになることだって考えられる。

そして、ここでもう一つ考えたいのは、この馬淵監督の選択が及ぼす野球界全体への影響です。

プロ野球、パリーグを中心に観戦しているファンの皆様にもお伝えしたいのですが、今、高校野球のみならず、プロ野球においてもある傾向が顕著に表れています。

それは投手の進化スピードに対して、打者が置いて行かれているという事実です。

もともと、メジャーリーグでの成功事例を見ても、圧倒的に投手の方が多いのは周知の事実だと思いますが、昨今のトレーニング革命などによって、投手はどんどん進化しています。

大谷翔平(エンゼルス)が高校時代に160キロを叩き出しました。今までの常識を覆したことで、どんどん160キロを超える投手が出てきた。160キロは無理でも150キロに到達することが珍しくなくなってきた上、データサイエンスも進出してきて、投手の能力が可視化されてきました。

目まぐるしく投手が進化していく一方、そのスピードに打者が追いつけていない現状があります。

こちらでコラムを執筆してくれているシバカワさんが興味深いデータを教えてくれました。

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