「やられたらやり返す。謙虚に1、2倍返しで」。西武・平良が9勝目の圧巻ピッチング。
「ノーヒットノーラン(ノーノー)でやり返そうとしたら、初回2番・今宮(健太)さんにセンター前を打たれました(笑)」と平良海馬はジョークを飛ばした。
7回を投げて6安打無失点で9勝目を挙げた。
石川柊太のお株を奪う快投劇だった。
前回のソフトバンク戦では4回7失点KO。しかも相手先発石川柊太にノーノーを決められた。先発転向1年目にしてQS率84.2%と中継ぎ時代と変わらない安定した成績を残している。ジョークを言えるのは結果を残しているがゆえの心の余裕だろうか。
「前回はスプリットを狙われている気がしたので、偏らないように気をつけました。中継ぎ時代以上に同じチームと対戦機会が多いので、しっかりデータをみています」
平良は高卒1年目のオフからトラッキング機器を自費で購入するなど常に研究を忘れない。特に象徴的だったのは2021年。2019年には全投球の60%以上だった直球を2021年には40%前後へと割合を減らした。「ストレートは空振りが取れずファールになることが多い。変化球を使って空振りやゴロを狙った方がいいかな」と語った。その結果、プロ野球連続無失点記録となる39試合を達成。常に自分と向き合い、変化を恐れない姿は先発転向しても変わらない。
先発転向1年目にしては十分すぎる成績ではあるが、中継ぎ時代は「平良が打たれて負けたならしょうがない」と絶対的な存在感があった。今の平良は「ある程度作ってくれる安心感」はあるが、中継ぎ時代までは辿り着いていない。
先発転向1年目の投手にこれ以上求めるのは酷だが、中継ぎ時代の平良の信頼度や野球への取り組み方からするとやはり高いものを求めたくなる。。中継ぎから絶対的エースへとなったオリックス・山本由伸のような活躍をファンは期待しているはずだ。(取材・文 壁井裕貴)