限界突パ

オリックス・中嶋聡監督は優勝パレードの翌日高知へ向かった。オリックス3連覇は”NEXT由伸”の誕生から。【番記者が語るオリックスリーグ制覇秘話】

番記者トーク。今回のゲストは3連覇を果たしたばかりのオリックスの取材を続けるフリーライターのどら増田さん。選手との距離感が近く球団関係者との関係性を構築するのが上手いライターの1人だ。世間にはなかなか出てこない情報などもたくさんある。今回はそんなどら増田さんにオリックス3連覇の秘話とポストシーズンへ向けてのキープレイヤーをたずねた。。(取材・文 氏原英明)

――早速ですけど、優勝の要因とか何が強かったのですか
増田 実際、今年は、去年と比べていわゆるベストバウト的な試合っていうか、ドラマチック的な試合が少なかったと思うんですよね。雑誌の優勝記念号で印象に残る試合という企画に参加してるんですけど、候補を出すのにすごく迷った。最後の2試合がとてつもなくいい試合だったけど、そういう試合は少なかった。

――なぜ、そうなったのか
増田 初年度にリーグ優勝を果たしたメンバーが当たり前のように活躍してるんですよね。だから、言い方は悪いですけど、いい意味で新鮮味がないというか。今年の優勝で大きいのは山下舜平太を去年の日本シリーズに帯同させた上で今年の開幕投手に指名したっていうところが、1番のハイライトなのかなと思いますね。

――なるほどね。だから、今年になって優勝を狙ってたんじゃなくて、去年の日本シリーズから次のシーズンが始まってたんですね。中嶋監督からしたら。
増田 私はそう思っています。本人はその件には触れてくれなかったけど、中嶋監督の中・長期的戦略があるなと。チームには“next由伸”っていう課題どうしても必要。そういった中で、山下舜平太という超新星が現れたわけですよ。それを中嶋さんに当てたら怒られてですね。「ぽっと出てきたわけじゃない」と。こっちもそれは理解してるんです。日本シリーズに帯同させているわけだから。でもその発言を聞いてもやっぱり中嶋監督は山下舜平大をしっかりと下で育てさせたんだなっていうのはわかります。

――今年には使うことを予測しておいて日本シリーズ最終戦ベンチ入りさせていた、と。
増田 ただね、予想としては3連覇まではできました。近くで取材していた中の感じとしては、3年目はぶっちぎりで優勝するというのはありましたよね。

――なんでそう思ったたんですか。
増田 そうでなきゃ駄目だと思いました。過去2年はマジックも点灯せず、最後までアタフタしながら優勝を迎えたわけです。1年目、2年目はそれでいいけど、チームが完成して、ある程度のリーグ優勝、日本一をまた狙えるチームとしての力はあるから。逆に他球団を見たときに、オリックスのようなことをやっているチームが見当たらなかった。ソフトバンクは最初は強かったですけど、やっぱりFAと補強をメインにされている球団なんで、3軍までありながらも生え抜きの選手、特にドラフト1位で取った選手が出てこない。育成はされていると思いますけど、オリックスには中・長期的な戦略がある。中嶋監督が2軍監督になったときからやってますから。それが結果的に後半の東が出てきたっていうのも、やっぱり中嶋2軍監督の時の選手ですからね。育成という部分で、他球団よりは図抜けてるなっていうのは感じていましたね。

――ただ1年目の優勝はラオウ(杉本裕太郎)がホームランキングをとって、打点も稼いでいた。吉田正尚が離脱しても、彼がいたからっていうのがあった。今年は森友哉が来たけど、ラオウはフルシーズン戦えたわけじゃないわけじゃない。

増田 ラオウは毎年、最後に帳尻合わせてくるところはある意味才能だと思いますけど、ほんと1ヶ月前までは打てなかったですからね。ほんと、この数試合ですよ。調子良くなってきたのは。

――そう考えると頓宮が驚くべき活躍と言ったら失礼かもしれませんけど、影響はありますか。

増田 頓宮もですけど、やっぱり森くんの存在は大きいと思います。頓宮に関しては一発を狙うのは初球だけにしたらしいんです。初球以外は狙わない。そうした結果アベレージヒッターとして開花するという。その延長線上のホームランも出てくる。吉田正尚と交流をずっと続けているそうなので、吉田正尚的なバッティングになったのかなという感じはしますね。

――元々、頓宮は吉田正尚と並べたかったぐらいなんですよね。

増田 ドラフトで頓宮を獲得した時にスカウトが言っていたのは、右の吉田を獲得できた、と。だから、ブーマーの「44」を付けているんですけど、頓宮が出てきたのも大きいし、今までもいたんだけど、開花しなかった選手が新戦力として機能しましたね。

――例えば、それは誰ですか。

増田 宜保ですね。セカンドは今年,ゴンザレスや太田椋が怪我で離脱している間に、宜保という存在が入ってきて、3割近いアベレージを残して、守備もうまいと。宗も好不調がある中で、ここでまた西野真弘が存在感を示してきました。あの辺はもうベテランになってくるんですけど、西野とか(外野手の)小田の存在も大きい。そうしてバランスの取れたチーム編成になった。怪我で離脱しても何とか誰かが埋めるというチームになりました。2点しか取ってない試合でも勝っているのはそこですね。

――頓宮もそうだけど、本来はもうちょっと早く頭角を現してもよかった選手達が、ここへ来ていろんな選手が不調とか怪我の間に覚醒した。そんなイメージですかね。

増田 そうですね。ただポジションを確立するまでの期間がここまで要したっていうことでしょうね。頓宮にしたら、一塁をやるのか、キャッチャーをやるのか、サードなのかわからないっていう状況の中で、今年はほぼ1塁と指名打者でキャッチャーは1試合ぐらいと思うんですけど、そこで固めたというところも大きかった。宜保にしても本来はショートの選手ですけど、セカンドを守った。要は安達了一のポジションですよね。ここをゴンザレスと競った。来年以降にも大きいと思う。

――一方でね、期待の若手と注目されてきた紅林が開幕にはいなかった。野口が台頭したのもあったと思いますけど、どうやって再生したんですか

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