限界突パ

時代を先ゆくオリックス・中嶋聡監督に対する阪神・岡田監督の微妙な匙加減が不気味なわけ。【日本シリーズ展望】

SMBC日本シリーズ2023が開幕する。
今年はオリックスー阪神による関西対決。年に開通した阪神なんば線沿線同士ととても近く地元は盛り上がっているようだ。

PLジャーナルではパ・リーグを制したオリックスの情報を中心にシリーズの展望をしていく。

リーグ3連覇を果たし経験豊富なオリックスには大きな死角は見当たらない。シーズン後半に離脱した頓宮悠真の状態と初日の練習に顔を出さなかった杉本裕太郎などベストメンバーを組める状態ではないことがやや不安要素か。

しかし、投手陣は初戦の先発を任されたエースの山本由伸をはじめ充実が光る。打線の調子が上がらないのであれば投手で勝負する。シリーズが開けてみないとわからないところだが、どういう戦いを展開していくかがポイントだろう。

特に初戦は阪神の先発が村上頌樹と発表されており、そう大味な試合になるとは考えにくい。いかに少ない点数で逃げ切れるかという鍔迫り合いになるだろう。

ただ、シリーズは最大で7戦もあり、初戦の結果が全てを表すわけではない。一つの試合を境にして両指揮官がどういう対応をしていくかが勝負の分かれ目になりそうだ。

オリックス・中嶋聡監督、阪神・岡田彰布監督の両者を簡単に比較すると、先進的な采配をする中嶋監督、百戦錬磨の岡田監督と表現できるだろう。一見、真逆のように聞こえるが、厄介なのは岡田監督が意外に新しくもあり、古くもあるというところだ。

オリックスの戦いは攻守ともによく考えられている。

選手がパフォーマンスを発揮しやすいような起用であり、オーダーを組む傾向がある。しっかりと休養を与えるなど、ベストコンディションはどういう状態であるかを指揮官が理解した上で最大値を発揮させている。

一方の阪神はオーソドックスだ。点差が開けば疲労を考慮することはあるが、勝つことを最優先に考えている。岡田監督が脅威なのはこの古くもなく新しくもないという絶妙な匙加減だ。

昨今の日本の野球は高校野球の球数制限などに代表されるように、コンディションを最優先に考える傾向にある。アマチュアでは大事なことだし、長いシーズンを考えればもっともなことだ。

しかし、日本シリーズは短いようで長い短期決戦と言われ、一つのことをきっかけにシリーズの趨勢がガラと変わってしまうことが往々にしてあるのだ。

コンディションの維持は大切であるように言われている一方、かつてはエースが第1戦と4戦に先発し、最終戦にもつれた際は登板準備をするようなことが普通にあったが、果たしてシリーズの流れとコンディション維持のどちらに重きを置くかで大きな変化をもたらすこともあるのだ。

日本シリーズは頂上決戦だ。日本一がかかっている中では時に、シーズンと異なることも考えなくてはならない。「絶対負けられない試合」とはまさに日本シリーズのことで、ここでは古びていると言われる投手起用も何でもありになることはあってもおかしくないのだ。

哲学は哲学として、とても大事なことだが、勝つための最善をどこまで両者が徹することができるかが、このシリーズの行方を左右する気がしてならない。

CSのファイナルステージ阪神は3連勝で日本シリーズ進出を決めたが、楽勝の展開はひとつもなかった。そんな中での投手起用はクローザーの岩崎優をはじめ、救援陣は3連投している。一方、オリックスは3勝1敗だが、そのううちの第2戦は山﨑颯一郎、平野佳寿の2人を登板させずに逆転で敗れている。

その後を勝利して、オリックスにとってCSはそう危ないものにはならなかったが、日本シリーズではそうした失敗が尾を引いてしまうことがある。

古くもある岡田監督は勝負所と見極めたら、勝負にこだわってくる。これは百戦錬磨の指揮官のなせる技でもあるが、中嶋監督はCSファイナルでの失敗をどうみて、采配を振るってくるのかは見ものである。

野球というスポーツで勝つためおマネジメントが変化している中で、昨季はマネジメントで勝利を挙げてきたオリックス中嶋監督に対して、岡田監督の野球はどう対峙していくのか。

勝敗の大きなポイントになっていきそうだ。(文・氏原英明)

 

 

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