限界突パ

【野球指導研究】⼤阪桐蔭から学ぶ、育成の切り分け  

根尾を指導していた際の西谷監督。

⾼校野球の⼤会は⼤きく3つある。 

秋季⼤会、春季⼤会、夏の選⼿権⼤会。 

1 年⽣⼤会や私学⼤会などを地区によっては開催しているところもあるが、実 質、この3⼤会が高校野球の主要大会と⾒ていい。そして、その多くがトーナメント戦で開 催されるほぼ「⼀発勝負」となっている。 

地区予選に敗者復活戦があったり、新⼈⼤会というのを先にやったり、地区予選では少数のリ ーグ戦もあるけれど、実質、負けることができるのは1敗のみ。高校野球の大会はほぼ負けることが 許されない戦いをしなければいけないというのは紛れもない事実だ。 

トーナメント=⼀発勝負。
負けたら敗退。次の試合に進めない。 

この⽅式⾃体を悪く言うつもりはなく、⾼校野球に多くのドラマを⽣むのはどんな強いチー ムでも、ちょっと間違えれば番狂わせを起こされてしまうからである。やってみないと分からないハラ ハラ感がトーナメント戦の良さと言えるだろう。


問題にしなければいけないのは3⼤会全てがトーナメント制であるということである。

トーナメント戦は⼤会の性質上、番狂わせを起こされないような試合をしようとしなけれ ばいけない。

それがどういうことかというと、初回からファーボールを連発する投⼿は起⽤しにくく、ダブルプレーで流れを失うのが怖いと思えば送りバントでまず⾛者を進めておこうと考える。野⼿の起⽤法も、打つ選⼿より、守れる選⼿の⽅が試合の出場機会が増えるなどといった点だ。 

投⼿はコントロールを鍛えることが重視され、野⼿は送りバントに時間の多くを割 き、進塁打を打つ意識を根付かせるようなことも多い。それら作戦⾃体が良い悪いかの議論ではなく、トーナメントを勝つために必要なことは何かとい うと、そういうアプローチになると言うことである。 

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 トーナメントで勝つチームづくり 

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⼤会3つともがその⽅式であるということは、つまり、常に、トーナメントで勝つことを意 識したチームづくりをしなければいけないということである。 

「スポーツの育成」の観点で考えたとき、ここに⼤きな問題が⽣じている。

指導者、選⼿ともがトーナメントで勝つことを念頭に⼊れて、練習に励むとなるとどんな練習をするのかといったら、 先ほど書いたように、トーナメントを勝ち抜くためには送りバント、進塁打が必要。投⼿は コントロール、バントシフト、投内連携、中継プレー、あるいは、ピックオフプレーなどを しなくてはいけないと言う発想になる。 

そんな練習ばかりをしていて、個の能⼒を上がるのか。 

選⼿の体⼒に際限がなければずっと練習をし続けられるでしょう。トーナメントで勝つための練 習、個の能⼒を⾼めるための練習する時間を分けて、⻑時間かけてできるかもしれないが、現実にそれは不可能なことで、時間に限りがある。

冬は体づくりだとか、技術を⾝につけるときだっていうけれど、その⾝につける技術のゴールの先が「トーナメントで勝つ」というのであると、⼤きくは育たないのではないか。 

つまり、⾼校野球のシステム全てがトーナメントであると、⼤会方式を意識したチームづくりを せざるを得なくなってくると言うことである。 

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 辻内崇伸(元巨⼈)は「⻄⾕」にしか育てられない 

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しかし実際、僕が⾼校野球の取材で多くのチームを訪問した印象としては、ある1チーム を除いては、そうしたチームづくりをしている学校ばかり。トーナメントで勝つための育成をしているチームしかないというのが現場である。 

その除いた1チームというのが、⼤阪桐蔭である。 

今回は⼤阪桐蔭の指導法についての触れたい。 

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