限界突パ

【検証2023 西武編④「かすかな光」】背番号は「10」と「20」に”昇格”。シーズン終盤に頭角を表した二人。

松井稼頭央新監督を迎えた2023年はリーグ5位に沈み、ポストシーズンに進むことなくシーズンを終えた。常に優勝争いをしているのが黄金期の西武だと考えると、さまざまな事情があったにせよ、この結果は、当然、納得できるものではない。では、この1年はどんなところに問題があったのか。「検証2023 西武編」の最終回は「かすかな光」。シーズン終盤に頭角を表した二人と来季への期待。(取材・文 氏原英明)

背番号「40」を纏う彼にとって、この登板は人生を変えるのではないか。
そんなことを思って試合を見ていた。

9月17日のロッテ戦のことだった。
リリーバーとして8月2日に昇格してきた田村伊知郎はそれまでの1ヶ月余りの間、快投を続けていた。11試合11、2イニングを投げて失点は2。8月15日からは9試合連続無失点を記録していた。

あまり目立つタイプのピッチャーではない。高校時代、1年夏の甲子園に出場。ほぼエース級の活躍でチームのベスト4進出に貢献した。「スーパー1年生」と騒がれたものの、その後はパッとした活躍することもなかった。

立教大学ではエースではなく澤田圭佑(ロッテ)に次ぐ第2先発の位置付けで、ドラフトの上位に挙がるような選手ではなかった。事実、2016年のドラフトでは6位指名という評価だった

西武入団後も4年目になって31試合登板を果たし、翌年にプロ初勝利を挙げたものの、2022年は3試合登板に甘んじいた。登板するのはおおよそ試合の勝敗とは直結しなところばかり。いつ首を切られてもおかしくない状況ではあった。

昨季は5月3日に1軍初昇格。そこで結果を残すことはできず、2度目の昇格は登板することなく抹消された。それからはチャンスがやってこなかった。入団3年目の豆田泰志が育成から支配下に昇格。田村の方がファームでは調子が良かったのだが、豆田の方が先に1軍昇格を果たしている。

その田村が、8月の昇格から一世一代のチャンスを迎えていた。

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