限界突パ

現役引退は後悔?バイオ・メカニクス部門にあのタフネス左腕・武隈祥太がいる理由。「全員は救えないけど、一人でも多く救いたい」。【ライオンズに尽くした男たちの第2章 第4回 武隈祥太】

ライオンズに尽くした男たちの「人生第2章」を追った。第4回はサウスポーとして長くブルペンを支えた武隈祥太氏。バイオメカニクス部門に席を置く彼は選手とコーチを繋ぐバイプレイヤーとして育成に関わっている。「クッションに慣れたらいい」。現役時代同様に繋ぎに徹する姿は彼の真骨頂とも言えるかもしれない。

――現役を引退されてこの1年、副寮長をされたり、バイオメカニクスの部分に入れられたと思うんですけど、この激動の1年を振り返ってください。
武隈 激動って感じではなくて日々の過ごし方がただ変わっただけでしたね。外から野球を見ることがなかったので、どうやって見たらいいのかなとか、自分が今まで見てきた景色と違ったところにアジャストするのがちょっと時間がかかったかな。

――裏を支える側でどういうアプローチをするかの戸惑いがあった。
武隈 バイメカの仕事の内容も、そもそも自分の野球スタイルとは違う認識だったので、見方がよく分からなかった。

――現役の頃はそんなにバイオメカニクスに関心がなかったんですか。
武隈 広い意味ではバイメカのことだったんですけど、投球フォームとか。でも、すごく気にすることもなかった。スコアラーさんよりの考え方でした。このバッターはこう攻めて抑えようとか、そっちのスタイルだったので、フォームとか動作にフォーカスして人を見るっていうのが難しかったです。

――どっちかというとデータの方が興味深かった。
武隈 興味深いというか、それで生きてきた所もあったんですよ。駆け引きでどう抑えていくかを考えてプレーしていたんで。

――現役を引退して、その部署がバイメカと聞いた時はどんな気持ちでしたか。
武隈 球団に残してもらえるのならどこでも問題なかった。それこそ指導者はないだろうなと思っていましたし、それでバイメカなのか。バイメカ部門の存在は知っていたんですけど、現役中はそんなに付き合いはなくて。今となってはすごい能力あって、すごい人たちだなんて思っていますけど、現役の頃は食事会場に行くと見かけた人たち。何をしてる部署なんだろうみたいなイメージ。映像を撮ったりはしてるのは知っていましたけど。

――武隈さんがそこにいる意味ってね、ひょっとするとそういう選手から遠い存在を近づけることかもしれませんね。
武隈 そう思ってもらえてれば嬉しいですけど、僕が現役のときは遠いものでした。野手の人たちとの距離感とかはよくわかんないすけど、それこそ、多分、日の目を浴びていないだけで、バイオメカニクスとか、そういう野球の研究ってそこら中にあると思うんです。現場に落ちてこないのは解釈できる人がいないからだと思うんですよね。もっと落ちてきたらアメリカみたいにもっとスピード感が出てくるはずなんですよ。そういう発信をしていきたい気持ちはあります。

――1年間やられて見えてきたものってありますか。
武隈 人のフォームが見えるようになりました。それこそ画角で映像とか撮るんですよ。現役のときは自分の球の軌道だけ見れたらいいわっていう感じで、フォームはあんまり見なかったんですけど、今はフォーム全体が映るみたいな映像を見なきゃいけないので、だからフォームを見れるようになりました。

――現役のときは、フォームを気にしていなかったってことですか。

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