限界突パ

「育成のライオンズ」というビジョンと指揮官の采配にある乖離。

「育成のライオンズ」ーー。
そう標榜しているはずの西武ライオンズが単独最下位に沈み、苦境に立たされている。何が起きているのだろうか。

昨今の西武はチーム改革に乗り出している。「育成のライオンズ」となるべくチームが一体となって突き進んでいる。

今年1月31日に川越プリンホテルで開催された「チーム全体研修」はそのチームの目指すものが示されたものだった。この研修会には松井稼頭央監督をはじめ、平石洋介ヘッドはもちろん、1、2軍の指導者陣だけではなく、全国に散らばっているスカウトから編成、ジェネラル・マネージャー、球団本部長、バイオメカニクス部門のメンバー、スコアラーなども参加。チームスタッフ全員で球団が目指していることの学び合いをおこなったのだ。西武を除く11球球団が2月1、2日に始まるキャンプに向けて動いている中での開催で、そこにチーム変革の想いを感じたものだ。

「指導者だけではなく、スタッフも全員育てる。1人1人のコーチだけが選手に向き合うのではなく、監督・コーチに加えて、バイオメカニクス、ハイパフォーマンス部門やスコアラー、スカウトなど、すべてのスタッフが選手を中心にして、みんなで会話できる。共通言語で会話できるという体制作りをしています。スタッフにも、勉強してもらい、世の中の動き、新しい技術・考えに合わせて、自分の担当じゃない分野のことも知ってもらおうということで、今回の全体研修はいい機会になりました。来年以降も続けていきたいと思います」

飯田光男球団本部長はそう語り、研修会の意味を説明した。

時を経て3月17日から甲子園で開催されたセンバツ高校野球には、スカウト、編成ディレクターだけではなく、副本部長の広池浩司氏、ファームディレクターの秋元宏作までスカウトの現場に現れた。これはつまり、互いの仕事を双方向で理解しようという姿勢が伺えた。「スカウティングと育成はセットで考える」という言葉があるが、西武はまさに育成に対して本腰を入れていることがわかる光景だった。

しかし、2024年のレギュラーシーズンは現在のところ最下位に甘んじている。
まだ19試合しか経っていないところでの結果はそれほど大騒ぎすることではないが、気になるのはそうした「育成のライオンズ」とトップチームの采配にちょっとした乖離を感じることだ。1軍は勝つための集団ではあるが、「育成のライオンズ」の目指していることとの戦い方に違和感を覚えてしまうのである。

昨年7月、本ウェブマガジンのスタート企画として、渡辺久信GMがインタビューに応じてくれた。

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