限界突パ

新入生の育成論第3回 「勘違いを起こす」【野球指導研究】

新入生の育成論第3回目。少し時間が空いてしまいました。今回はアマチュアだけではなくプロに置きやすい「新人」を早期に起用することの考え方を紹介したいと思います。いい選手はなるべく早く使いたいと考えるものですが、そこには故障リスク以外でも難しさを孕んでいます。メジャーリーグなどではいい選手はどんどんカテゴリーを上げていきそうですが、実は、意外と繊細に考えられたりする。そういう観点から1年生の育成論を考えてみました。(文・氏原英明) 

今週はメジャーリーグのデビューにまつわる話を⼀年⽣に結びつけてお話したいと 思います。

ドジャースにクレイトン・カーショウというサウスポーがいます。
1988 年⽣まれ、⽇本で⾔えば⽥中将⼤(楽天)や前⽥健太(ツインズ)と同学年になるの ですが、現在、すでにサイヤング賞3回受賞、通算 177 勝 77 敗 防御率 2.44のメジャ ーを代表するピッチャーです。彼は 2006 年に⾼卒で⼊団し、2008 年にメジャーデビュー。常にメジャーの先頭を突っ⾛ ってきてきました。しかし、実はデビュー年だった 2008 年にドジャース内では激しい議論 が繰り広げられました。

その議論の内容とはデビュー時期です。
カーショウのキャリアを⾒ていると、1 年⽬はルーキリーグからのスタート。37イニング を投げると、翌年に2A に昇格。1A に⼀旦、降格するも圧倒的な成績を残しました。その 上で、翌年にメジャーデビューを迎えるということになりました。3 年⽬ですから 20 歳になったばかり。ここで、デビューが早いのではないかという議論に なったのです。勝てる・勝てないではなく、議論の対象になったのは早々にデビューするこ とで、勘違いを起こしてしまうんじゃないか。そういう視点です。

しかし、なぜ、そんな議論が⾏われたかというと、実はこれには背景があります。 というのも、過去にドジャースは将来のスーパースター候補だった選⼿を能⼒が⾼いからと⾔って、早々にデビューをさせて失敗していたのです。

その名はエドウイン・ジャクソンです。
2001 年のドラフト 1 位(全体6巡⽬)の E ジャクソンは 2003 年にメジャーデビューを果 たしました。しかし、このデビューが⾜かせとなります。04 年、05 年と鳴かず⾶ばず。故 障もあったのですが、素⾏が悪く、なんと 2006 年にはトレードで出されてしまいました。

(残り 2030文字/全文: 3001文字)

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