【2024年読まれた記事】記録的惨敗のシーズンで、西武のキャプテン源田壮亮が感じたこと。「そこがすごく疑問でした」。
2024年は多くの方にウェブマガジンにはお越しいただいた。
その中で、多く読まれた記事を紹介する。
ランキングトップは今、話題の人、源田壮亮選手の記事。プライベートのことにはほとんど興味がない筆者なので、ここは嘘偽りなく掲載させていただく。実はこの取材。もっとほのぼのとしたものになるかなぁという気持ちで挑んだぶら下がり取材だったが、源田キャプテンの本音が漏れてきた。これはいろんな人に伝えなければいけないという使命感で書き上げた。トップになったことは個人的にも満足しているので、もし、まだ読んでいない人がいたら、ぜひ、読んでほしい。1月3日まで無料配信する。
ホーム最終戦。いつもと変わらず練習を引き上げた西武のキャプテン源田壮亮は惨敗に終わったシーズンを振り返った。
「苦しいことばかりでしたけど、野球をやっているといいシーズンもあれば、悪いシーズンもある。優勝して『あのシーズンがあってよかったなって』って言えるようにしなくちゃいけない」
そう語る源田にはやはりファンへの想いがある。記録的大敗にもチームを見放すことなく声援を送ってくれた西武ファンは今季150万以上の観客を動員した。これが上位戦線を争っているならまだしも、9月10日には最下位が確定しているのに、スタンドを埋め尽くしてくれた。そんなファンへの感謝の気持ちがある。「こんな成績でも昨日もすごく入ってくれて熱量もすごくて。やっぱり勝って喜んでもらいたいですね」と恩返ししたいの気持ちは強い。
とはいえ、キャプテンとしてこのままではいけないことはシーズンを通して感じているところだ。語り口が穏やかではあったものの、源田は「感じることが多かったシーズン」と今季は浮き彫りになったチームの課題をこう語る。
「出場機会をみんなもらったっていうのはいいことなので、それは将来につながります。でも、それをいい経験ができた。1軍で試合に出れたというので、終わってしまわないようにしないといけない。本当に経験を来年以降に生かしていかないと本当にいい経験ができたとは言えないと思うんです。そういう部分で導き、考えてやっていかないとこのシーズンがあって良かったっていうふうにはならない」
怒気は含んでいなかったが、入れ替わり立ち替わりスタメンに出場する若手選手たちを見ながら、時に疑問に思うことも少なかった。それはレギュラーで試合に出ることの意義だ。
今の西武はレギュラーがほぼ決まっていない。それは言い換えればチャンスが多くあるということでもあるが、一つ一つの試合に覚悟を持って取り組んでいないというのが源田が感じているところだ。「レギュラーをつかむ何年間っていうのは、やっぱり意地でも試合に出てやる。そういうふうに思ってやっていた」という源田が若手に足りない姿勢をこう話す。
「若い選手がいっぱい試合に出ていて、良かった日もあれば駄目だった日もあると思うんですけど、試合に出ることに対して責任というか。当然、誰かが出たら、試合に出られない人もいるわけなんで、そういう人たちも納得できるような姿を見せる。そういう思いを持って、グラウンドに立ってほしいなって思いますね。今シーズンはそこを疑問に思う時が何度かありました」
いわば順番待ちをしている状態で、悪かったとしてもまた出番が来るということに甘えてしまっている若手の姿があり、そこになかなかレギュラーに定着することができない現状の問題を多く感じてるという。
源田がレギュラーを獲得した際は、確かに、ショートに多く人材はいなかったかもしれない。ただ、当時は山賊打線のフルメンバーがいる中で、なんとか、その中に入るという気持ちは源田を支え、そして今がある。それだけに、今のチームが過渡期に差し掛かり、誰にでもチャンスがあるという状況は、選手たちの緩さを生み出しているという事実がある。
「数試合スタメンで出なかったらまたスタメンで出れる日が来るのが現状なんで、その中で、難しいのかもしれないすけど、順番待ちしとけばという感覚では駄目と思う。突出してやっていける人がいなかったっていうのは事実だと思います」
朴訥とした静かな語り口からの厳しい言葉はズシリと音がするくらいかの重さがあった。今季中に1000試合出場を達成。社会人出身だから、どれだけチームの中心として戦ってきたかは推して知るべしである。源田はこういった話をチームメイト全員にはしないのだという。話して響く選手にだけ話すに留めるというから、いわば厳しさを持っているキャプテンと言えるだろう。
今季91敗を喫した中で西武の若い選手が経験を積んだのは確かだ。ただ試合数を重ねただけでは何も変わらない。
源田の言葉をどう受けとめることができるか。
来季の課題はそこにあるといっていい。(取材・文 氏原英明)