かるたーの大阪野球マガジン

【高校野球】今年から採用の新基準バットがもたらす可能性

さて、当ウェブマガジンは基本的には高校野球を中心にやっているので、それに関連した話題を。今年の話題はどの高校が強い、この選手がスゴい、とかよりも真っ先に思いつくのは今年から採用される新基準の金属バットがもたらす影響だろう。

すでに多くのメディアから使用者の声などがあがってきている。その中でよく「野球が変わる」という言葉を目にする機会が多い。では、どのように変化するのだろうか。秋季大会以降、多くの高校が練習試合や準公式戦などでは今年を待たず、すでに新基準のバットへと移行している。その際に聞いた話、実際に見た感じによる主観をまじえて、語ろうと思う。

◆打低によって投手有利に。起用法にも変化が?

まず、飛距離や打球速度が落ちるので、全体的に得点力が低下し、投手有利になることは想像しやすい。これは第一前提として、投手や守ってる野手への安全面への配慮がある。実際、近年は高校生世代の技術、フィジカルの向上もあって、打球速度が上がりすぎて、投手が避けきれずに打球が直撃するといった事故が目立っていた。新基準のバットではその打球速度が低下するため、このような事故を防ぐ、あるいは軽減の効果が見込める。

中学硬式野球の全国大会・ジャイアンツカップでは先立って、反発係数を低くしたバットが使用されていたが、得点、長打の数が半減といっていいほど効果が出ていた。おそらく、今春のセンバツでも同様の結果が出るのではないかと思われる。

2011年、2012年にNPBでは低反発球に変わり、ここでも打者の数字が大きく落ちた。また、2002年にはストライクゾーンが高めに広がる投手有利のルール変更が実施され、防御率の良化、四球数の減少など投手成績の向上と同時に打撃成績は全面的に低下した。他に効果があったのが試合時間の短縮である。このような投手有利、打者不利のルール変更がもたらされると、時短の効果が出ることが多い。

近年は野球界でも時短を謳う傾向があり、社会人野球では一部の大会で7イニング制、MLBで導入されているピッチクロックも昨年から導入済みだ。ルールから根本的に時短効果を狙うところもあるが、今回の新基準のバットに移行する中で自然とそんな時短の効果が出る可能性は高いと見ていいだろう。以前まで本塁打になっていた打球がフェンス手前で失速したり、安打になっていた打球がアウトになったり……などでこれまでよりアウトになる確率が高くなる。

また、アウトになる確率が高くなるということは投手の球数が減って、負担が軽くなる。いわゆる「打たせて取る」タイプの投手にも恩恵が出る。近年は仙台育英などが顕著だが、複数の好投手を起用することがトレンドになっていた。投手酷使への風当たりが強いだけでなく、戦術面でも絶対的なエースと心中では負担が大きく勝ち抜けなくなっていた。ところがこの新基準のバットの移行による投手有利と負担軽減がもたらす影響によって、「絶対的エースの復権」があるのではないかと思う。つい最近でも金足農・吉田輝星(2024年よりオリックス)、近江・山田陽翔(現・西武)といった一人で投げ切る系の投手はまったくいないわけではなかった。とはいえ、現在の高校野球は1週間500球以内の球数制限があるので、複数投手を用意するに越したことはない。ただ、人数不足に悩む公立校などはチャンスの側面もある。

◆新基準バットは「ギュウーーーン!!」という伸びがない

実際に見て感じたのは「確かに打球が伸びない」ということだった。これはある指導者が練習試合で球審をしていた時でも同様の声がある。以前なら本塁打、外野の頭を越えると思われた打球が外野手が追いつくほどの飛距離にしかならないというものだ。外野側から見ていた時に目のあたりにしたのはいわゆる「ギュウーーーン!!」という打球の伸びがない。擬音による表現で申し訳ないが、以前は芯に当てた打球はこんな擬音が聞こえてくるほど、多くの打者がそんな打球を放っていた。しかし、新基準のバットではほとんどの打者が外野の真ん中あたりで失速する。そのためか、以前の感覚であればライナーで外野の間を抜けていた打球が止められるといった光景をよく目にした。これは先ほどの投手有利になる影響とも重なる。当然、長打が減れば、その分、得点確率や効率も落ちる。

また、ある公立校の指導者が言っていたのは、

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