かるたーの大阪野球マガジン

第106回全国高校野球選手権大阪大会 組み合わせ展望

7月6日に開幕する第106回全国高校野球選手権大阪大会の抽選会が617日に行われた。今年は4回戦以降の再抽選は1度のみに変更されたが、まずは例年通りの北地区と南地区に分かれての3回戦までの組み合わせが決まった。それぞれのブロックの見どころや展望を語っていきたい。

3回戦までの組み合わせは大阪府高野連からこちらのページへ。

北地区

【ドーム・万博など】

春優勝の大院大高、3位の仰星が中心か

大阪桐蔭、履正社の二強を撃破し、春に優勝を果たした大院大高、同3位の東海大大阪仰星(以下、仰星)が軸になるだろう。どちらも春の勢いのまま上位進出といきたいところだ。しかし、同志社香里は今春はシード目前の4回戦まで進出しており、初戦で当たるには厄介な相手。仰星も昨秋5回戦で対決した摂津と初戦で当たる可能性がある。その時はもつれた試合展開だっただけにこちらも難敵との相手になる。公立校ながらシード校の寝屋川は開幕カードを戦う枚方津田と交野との勝者が相手。3校ともご近所といえる関係で高校同士の交流や小中学時代のチームメートや同級生などもいることだろう。そういった点も高校野球の見どころのひとつ。この山は昨秋四強の桜宮と関大一の対決も見ごたえのある試合になるだろう。関大一は昨夏も投げた万力康生の成長にも期待だ。関大一はこの公立の包囲網を抜け出せるか。他には北野、春日丘、大冠の公立の好チーム、大阪高も上位進出の力は十分ある。

【住之江】

シード校不在も履正社など私学の実力校が集まる

昨夏に続き、ノーシードからの逆襲を狙う履正社。それだけでなく、実力のある私学が集まった。このブロックの中心的な存在になるであろう履正社は豊中と開明の勝者が相手となる。豊中、四條畷はともに例年、質のいいチームを形成してくるが、さすがに選手層に分がある履正社が順当に上がってくると見る。千里青雲、池田には好投手がいるが、大産大付と関西大倉の私学2校の牙城を崩したいところ。他にも関西創価、常翔学園、大阪電通大の山と星翔、大阪青凌、早稲田摂陵の山は熾烈な私学の争いとなりそう。その中でシード校の経験もある関西創価、早稲田摂陵が抜け出してくるか。強豪、中堅私学による争いが目立つブロックだが、三島と阿武野の近隣の公立校対決、桜和が初の単独チームでの出場となる。これは近年、少子化や生徒数減少の影響でチーム数が減ってる中、明るいニュースだ。その戦いぶりに注目したい。私学が目立つ中で公立校の健闘を期待したいところだが、住之江は球場が狭い。新基準バットになったとはいえ、パワーで勝負できる私学はその面で有利に働きそう。

【舞洲・南港】

シード校が集中!大阪桐蔭は王座奪還へ勢いづくか

住之江がシード校なしだったのに対し、こちらは北地区のシード校8校の内5校が集まった。その中でも注目は王座奪還と2年ぶりの代表を狙う大阪桐蔭。春は優勝を逃したが、戦力の充実度は今年も12を争う。特に投手層の厚さは今大会どころか全国でも屈指。初戦は東と成城の勝者が相手となる。公立校に囲まれた山で順当に勝ち進むと思われるが、その公立校は一矢報いることができるか。それ以外のシード校では関大北陽は山田と汎愛、追手門学院は昨秋8強の槻の木の他に茨木、桜塚と公立の好チームが控える。どこが勝ち上がっても3回戦が山場となりそう。金光大阪は都島工と刀根山、太成学院大高は守口東と箕面学園の勝者とそれぞれ初戦で対決する。特に昨夏4強の箕面学園は初戦となる太成学院大高にとっては難敵となる。シード校を中心とした私学に実力校、実力者が揃う。また、会場である大阪シティ信用金庫スタジアム(以下、舞洲)での公式戦の本塁打は昨秋の準決勝以降なし。新基準バットでの1本目は誰が打つかにも注目したい。

南地区

【南港・舞洲・久宝寺】

オールドファン必見!公立、私立ともに伝統校がしのぎを削る

南港や舞洲がメイン会場になるこちらのブロックはシード校は北地区と同じく5校。そのうち、精華、大商大高あたりは順当に抜けてくるか。堺西、今宮あたりの公立校が意地を見せたい。他の3校は今春準優勝の興國をはじめ、大体大浪商、大鉄が前身の阪南大高と古豪の私学が名を連ねる。その中でも興國は明星と東住吉の勝者の対決となる。明星との対決が実現すれば、かつては私学七強として名を馳せ、甲子園優勝の経験もある古豪同士のカード。ともにユニフォームも往年のままで、復活を待ち望む卒業生やオールドファンにとっては胸が熱くなる対決となるだろう。大体大浪商もお互い勝ち上がれば、昨夏5回戦進出の伝統校・三国丘との対決が実現する可能性がある。しぶとい野球が特色の桃山学院も歴史がある。阪南大高は阿倍野と高石の勝者との対決。全員投手をこなす阿倍野も甲子園出場実績のある伝統校。2020年の代替大会は機動力で私学をかきまわした高石も初戦で当たるには不気味なチームだ。私学、公立ともに伝統校、古豪が集まったブロックでオールドファンを喜ばすカードや試合が展開されそうだ。

【久宝寺】

復権、逆襲を狙うノーシード勢の有力校が虎視眈々

シード校なしのブロックとなった久宝寺。ただ、顔ぶれはシード校とも遜色はない。注目は近大付。昨秋、今春ともに大阪桐蔭に敗れ、秋は接戦、春はコールドで敗退と両極端だが、実力は府内でも上位クラスなのは間違いない。待ち受けるは初戦を戦う和泉、岸和田産などの公立校で金星を狙う。他の山は上位進出へ向けて熾烈な争いだ。タレントが揃う東大阪大柏原も府内屈指のチーム力を持つ。独特なアプローチで強化をする大阪学芸、公立の実力校・八尾が控えるブロックを勝ち抜けるか。上宮と浪速が集まった山も熱い戦いが展開されそう。特に浪速は昨秋5回戦進出の山本と初戦を戦う。山本は昨夏を経験したエース・笹谷を中心としたセンターラインが強力。旋風を起こしそうなチームだ。他の山はやや無風なゾーンだが、もはやおなじみとなった全員両打軍団の佐野、鋭いスイングの打者が揃う花園などが一つずつ勝っていく中で成長して、大会をかき回すような存在になるとまた大会も一段とおもしろくなってくるだろう。

【くらスタ堺】

シード校中心に強豪揃う。熱い組み合わせも多数

おそらく、3回戦までで最も組み合わせが厳しく、熱い試合が多そうなブロックだ。まず、シード校は近大泉州、清教学園、公立の泉陽と3つ。清教学園は初戦で初芝立命館と生野の勝者と対決する。さらに3回戦では大商大堺と布施の勝者も控えている。初のシード獲得を果たしたものの厳しい組み合わせとなった。近大泉州は公立ばかりのゾーンに入ったが、天王寺、久米田と公立の好チームがひしめく難敵揃い。独特なカーブが武器の久米田のエース・原田の投球が私学相手にどこまで通用するか楽しみ。泉陽は大塚と美原の勝者が相手。公立の雄・大塚が初戦の相手となると、泉陽としては厄介だ。どっちが来たとしても打倒私学、8強へ向けて負けられない初戦となる。シード校以外では大阪偕星学園と上宮太子が3回戦で実現しそう。堺がそこに待ったをかけるか。城東工科と岸和田の初戦も見ごたえのある試合になりそうでどちらが上位進出へ向けて弾みをつけることができるか。信太は例年、爆発力のある打線が持ち味、東住吉総合・泉尾工も連合チームながら、上位進出を狙いたい。

 

【全体の展望】

まず、組み合わせ全体を見ると、所々で有力校が固まっているトーナメントの山は点在するものの、有力校は散らばった感がある。個人的には今のシード校の方式ではノーシード制だった頃とたいして変わらないだろうと思っていた。しかし、近年の夏の組み合わせを見ると、シード制が導入されてから有力校が固まるといった組み合わせは減ったように思う。シード校が分散するので考えてみれば当たり前なのだが、大阪は中堅校が多く、以前は3校ぐらいに有力校が固まった山がもっとあった。それらが減った感があるのは出場チーム数の減少の他に公立校の有力校が減った影響もあるのではないだろうか。以前は2008年、2012年に全国制覇を果たした大阪桐蔭を最も苦しめた箕面東など公立校でも私学に脅威となるような存在のチームも多数あった。ところが箕面東も今では連合チームで参加している。その中で今年は2校の公立校がシードを獲得。ノーシード勢にも期待のチームはあるだけに公立勢の躍進は他の私学にも火をつけてくれる。そんな戦いを今年は期待したいものだ。

全体の展望としては4回戦以降の組み合わせ抽選からが本番となるだろう。その中ではやはり、選手層に分がある大阪桐蔭が軸。ただ、履正社の粒揃いな戦力も侮れない。春はこの二強の対決はなかったが、果たしてこの夏は実現するかどうか。履正社は髙木大希に次ぐ投手が課題だったが、藤原僚人の目途が立ったことで投手陣は厚みが増した。この二強を相次いで破った春優勝の大院大高は選手層の底上げが鍵。辻盛監督も夏へ向けて、もう2枚ほど投手が必要という旨を春季大会の決勝後に語っていた。スター性を感じる今坂幸暉のプレーは空気をガラリと変える力がある。それをこの夏も発揮し、一気に甲子園へ駆け上がれるか。この3校は特に夏はマークが厳しくなるだろう。ただ、大院大高が春に二強を相次いで勝利し、優勝したことで二強時代の揺らぎは見えた。その揺らぎが継続するのか、あるいは踏みとどまるか。バットも新基準となり、新たな時代へと移り変わっていく夏になりそうだ。ただ、まずは序盤の3回戦、各チームがどのような戦いぶりを見せ、取り組みの成果をいかに表現してくれるか。その選手たちの姿をできる限り多く見たいし、見せてほしい。

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