九ベ! ——九州ベースボール——

チームに根付く”負の体質”を払拭したのは「プロジェクトX」だった⁉ 鳥栖工①

鳥栖工は2023年夏の甲子園に初出場し、延長12回に及んだ富山商との初戦に3-2でサヨナラ勝ち。2回戦は甲子園春夏通算3度優勝の強豪・日大三(西東京)に1-3で敗れるも、五部の接戦を繰り広げて聖地にたしかな爪痕を残した。
じつは昨年、鳥栖工が挙げた1勝は、2013年夏の有田工以来となる佐賀県勢10年ぶりの甲子園勝利でもあった。
そして2024年夏。鳥栖工は2年連続の甲子園に王手をかけながら1-2で惜敗し準優勝。それでも2005~06年の佐賀商を最後に連覇のない佐賀県の中で、堂々たる地位を築いた感もある。
「公立王国・佐賀」に現れた新・公立の雄。最速145㌔右腕の松延響(2年)を擁し、来年春夏の甲子園出場を狙う鳥栖工は、ここ数年の間にいったい何があったというのか。指揮5年目を迎えた大坪慎一監督に、あらためて話を伺った。

2009年夏の佐賀大会決勝に進出した伊万里農林(現・伊万里実)。相手は優勝候補の本命、佐賀商だった。1-3と追い込まれた延長10回裏、伊万里農林は下位打線の3連打で奇跡の逆転劇を演じ、春夏を通じて初の甲子園出場を掴み獲った。そのチームを指揮していたのが、他でもない大坪監督だ。その後、鹿島での指導を経て、2020年に鳥栖工に赴任し現在に至っている。
赴任当初は11人しかいなかった伊万里農林を、7年の歳月をかけて甲子園に導いているように、戦力的に決して恵まれていない公立校を強くする指導には定評がある。甲子園出場がない鳥栖工に転勤が決まった時も、地元関係者の間には「これで潮目は変わるかもしれない」といった期待感が充満したという。
しかし、大坪監督には“現状打破は決して簡単なことではない”という思いもあった。

次のページ

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ