都市対抗を逃した九州最強打線が沈黙した理由━━Honda熊本・渡辺正健監督①
チームにとってターニングポイントとなった秋
━━都市対抗の連続出場が8年で途絶えてしまった結果については、どう受け止めていらっしゃいますか?
「連続出場というのは、ずっと続けられれば良いに越したことはありません。でも、いつかは途絶える日が来るし、チームが成長するためには経験しなければいけないことだと思うんですよね。そういう挫折を経験し、壁に直面した時に、どうやって乗り越えていくのか。その過程が成長のきっかけになるはずなんです。それがたまたま今年になったということです」
━━そこから日本選手権の代表権獲得まで、どのようにしてチームを立て直してきたのですか?
「まず、都市対抗の代表を獲れなかったという結果を、チームとしては糧にしていかなければいけないと思っていました。沖縄(都市対抗二次予選)での反省を7、8月の練習に反映し、日本選手権予選では必ず代表を獲る。それがひとつの目標にもなりました。それを叶えるためには、沖縄での経験をヒントに変えて、どう成長していくかがカギになります。この秋はHonda熊本にとって、非常に大きなターニングポイントになると思っていました。もし代表権を逃したら、チームは苦しい時代を迎えることになるかもしれない。それぐらいの覚悟を持って臨んだ結果、再度の挑戦であらためて代表権が獲れたというのは、チームとして大きな収穫になりました。もちろんここまで上げてこられた原因は、みんなの共通認識としてありますから、今度はそれを大阪で発揮していくために、どう形にしていくか。今はそういう練習をしています」
━━その「全員で共有できている」部分とは何なのでしょうか?
「僕が目指しているのは、投打のバランスが取れたチーム。どちらに偏ってもダメなんです。大阪ガスに敗れて準優勝した去年の日本選手権は、やはり投手力不足で最後は及びませんでした。だから今年の前半はバッテリーに注力してきたのです。これは僕の反省すべき点なのですが、打者の方はある程度の実績もあるし、JABA大会でも順調だったので、都市対抗予選では力を発揮してくれる“だろう”と思い込んでしまったんですね。でも、いざ蓋を開けてみると、投手陣が良い成績を残している反面、打線はまるっきり打てなくなっている。だからもう一度、投打のバランスを整え直そうということでやってきました。なぜ打てなかったのかを分析すると、やはりファーストストライクを振れていないなど、積極性に欠ける部分がありました。だったら、もっと振っていけるようにということで準備をして、それが上手く嚙み合った結果が日本選手権の代表権を獲得することができたと思っています」
━━たしかにHonda熊本といえば、強いスイングでガンガン振っていくイメージを持った人が多いと思います。
「去年の日本選手権で準優勝に終わったあと、先ほども申し上げたように、たとえ打てなくても点を取っていけるだけの引き出しを作っていかなければ、上では勝てないと思いました。しかし、そういう引き出しも必要なのが間違いないとは思いますが、結局はバッターの適正にもよるんですよね。ただ、僕の中には“みんなができなきゃダメだ”という思いがあって、全員に同じことを求めてしまったのです。『原因はそこにあったのではないか』という話をヘッドコーチとして、本来の形を取り戻す練習をして選手権に臨まないといけないと考えました。ただし、チームの中にはそれまで練習してきたような戦術に対応できる選手も必要だし、そこに適性のない選手もいます。そのあたりを夏の間にもう一度整理しつつ、投打のバランスも再整備しながら日本選手権予選に向かいました。結果的に打線は4試合で30得点。爆発してくれましたね」
(つづく)