序列逆転! 神村学園・早瀬が「九州ナンバーワン」に シン四天王の春【前編】

2025年の「シン九州四天王」。左から海星・陣内、延岡学園・藤川、神村学園・早瀬、鳥栖工・松延
9年ぶりに現れた4つの一等星
今年の九州高校野球界には、名実ともに抜けた4人の右腕が存在する。
延岡学園・藤川敦也、神村学園・早瀬朔、海星・陣内優翔、鳥栖工・松延響だ。
なんとも勝手な話ではあるが、私はこの4人を今年の「九州四天王」と呼びたい。それも「シン四天王」だ。
というのも、九州四天王には“先代”がいる。今から9年前の2016年、九州には福岡大大濠の浜地真澄、九産大九産の梅野雄吾、れいめいの太田龍、そして都城の山本由伸という4つの才能が非常に高いレベルでしのぎを削っていた。私は彼らを「九州四天王」と呼び雑誌で紹介したところ、彼らはその称号とともに全国区の注目投手となった。4人はいずれもプロ入りし、うちひとりは世界一球団ドジャースのエース格へと登りつめている。
ただ、2025年「四天王」の実力は、先代に勝るとも劣らない。
昨年スタートしたこの「九べ」第1回記事で取り上げた藤川は、2年5月に最速153キロを投げ、地元宮崎県で「寺原隼人(日南学園~ダイエー)以来の怪物」と騒がれた。昨年の夏前は150キロを超えるストレートを連発し、5イニングのアベレージが144・5キロを記録した試合もあった。先日のU-18日本代表候補合宿にも選出された、世代トップクラスの実力を備えた剛腕だ。
早瀬は昨年春夏の甲子園に出場。とくに夏は3回戦・岡山学芸館戦での先発完投、準々決勝・大社戦のリリーフ登板で勝負強さを見せつけ、2年連続の4強入りに貢献した。今春は秋から10㎏増量で新シーズンを迎え、解禁最初の試合でそれまでの最速を3キロ更新する147キロを記録。春の鹿児島大会でも148キロと最速を更新し、決勝ではついに150キロに到達した。
昨年5月のNHK杯地区予選で県内公式戦初の完全試合を達成し、全国的に大きな注目を集めたのが陣内だ。秋の準決勝では最速150キロを計測し、九州地区トップクラスのポテンシャルが爆発。しかし、その試合後に以前から痛めていた肩の痛みが悪化し、半年以上も実戦マウンドから遠ざかっている。
松延は1年夏の甲子園に出場。6回から登板した富山商との初戦は、延長12回まで相手エースと一進一退の投げ合いを展開し勝利した。続く日大三戦で敗れたものの、自身の最速を2キロ更新する144キロを記録。じつに“舞台映え”するマウンド姿に「2年後の秋」が待ち遠しくなったものだ。
すでに4人のうち3人は最速150キロに達しており、ふたりは甲子園での勝ちを経験している。今年の九州地区には彼ら以外にも有望な右腕が何人も存在するが、投手としての総合力、実績を鑑みれば、やはり藤川、早瀬、陣内、松延が筆頭格と認めざるを得ないのだ。
「九べ」は、秋のドラフトに向けて「シン四天王」の追跡を続ける。まずは春季大会を終えた現時点での立ち位置と評価を、関係者や私自身の見解、さらに本人のコメントを交えながら紹介したいと思う。
「寺原以来の怪物」 どうしても気になった肘の角度
昨夏前の時点で藤川を見た時“これは今年のドラフトでも上位だろう”と溜息が出た。
1試合の中(5~6イニング)を投げた時の常時スピードがとにかく速く、私が見た明豊との練習試合での平均は6回を投げて144・5キロで、最速は149キロだった。しかし、ストレート以上に目を引いたのが、変化球のコントロールである。球種はカーブとスライダーのみだが、とにかくスライダーがキレキレで、常に絶妙なコースに決めながらストライクを先行させるのだ。
たしかに2年夏前の藤川は、私が過去に見てきた2年生投手の中では「歴代ナンバーワン」と断言してもよかった。これは決して大袈裟な話ではない。
しかし、そのわずか2週間後の夏の大会で見た時には、藤川の姿に“おや?”と首を傾げることとなる。
(残り 2810文字/全文: 4472文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ