復活間近の“完全男”と、投球IQの高さを備えた公立の快腕 シン四天王の春【後編】

2025年の「シン九州四天王」。左から海星・陣内、延岡学園・藤川、神村学園・早瀬、鳥栖工・松延
眠らせたままの力はケタ違いのスケール 海星・陣内、いよいよ今週末復帰へ
シン四天王の中で、もっとも苦しいシーズンインとなってしまったのが海星の陣内優翔である。
中学時代に長崎県選抜(軟式)の一員に選ばれるなど名を馳せた陣内は、1年春に九州大会メンバー入りを果たすも、1年夏前になって肩を痛めた。ここから復調した昨年5月頃は、延岡学園の藤川敦也とともに九州の東西で無双状態に突入する。
まずは5月のNHK杯地区予選、長崎東戦で完全試合を達成した。最速145キロのストレートとキレ味抜群のスライダーが冴え、10奪三振を記録。過去に数多くの好投手を輩出してきた長崎県だが、完全試合は県内のローカル大会を含めても初の偉業だった。
しかし、この快挙と引き換えに、陣内は再び肩を痛めてしまう。これで夏初戦の登板を回避。チームもまさかの初戦敗退に終わり、陣内は茫然自失のまま2年目の夏を終えてしまった。
肩の痛みが癒えた秋は以前にも増してボールが強くなった。準決勝の波佐見戦では、今世代の九州では藤川に続いてふたり目の150キロを叩き出す。ただ、ここで三たび右肩に痛みが走る。優勝して臨んだ九州大会も本人の意思で初戦に登板したが、10回2/3を7失点(自責3)で初戦敗退。センバツ切符を逃した時点で、陣内は長期のノースロー調整期間に入った。
ここまでは、最高出力の放出と引き換えに肩を壊してきた。加藤慶二監督が「まだまだ本当の体の強さが備わっていなかった」と言うように、あまりに大きなエネルギーに耐えられるだけのフィジカルが陣内にはなかったのだ。
春の解禁を迎えた頃、加藤監督は「春に陣内を投げさせるつもりはない」と断言した。ところが、大会が始まってみると、海星ベンチの最前列に背番号1を付けた陣内の姿があった。加藤監督によると「代打での起用があるかもしれない」という理由だった。チームは陣内の登板がないまま長崎を制し、地元で行われる九州大会(19日開幕)進出を決めている。
マウンドに上がることはなかった陣内だが、じつは準決勝、決勝のスタンド下ブルペンには、極秘裏のうちに投球練習を再開させた陣内の姿があった。
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