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【コラム】佐久長聖高OBが優良企業に続々就職。藤原監督に進路指導方針を聞く

佐久長聖高校から初めてのプロ野球選手が生まれた。16年に夏の甲子園に出場したときの主将、元山飛優(東北福祉大)だ。当時のチームメートたちもこの春、大学を卒業し社会へ羽ばたく。

その就職先には、いわゆる一流、優良と呼ばれる企業が数多く並ぶ。卒業した部員の多くが大学進学し、野球を続けることで定評のある長聖。その流れは就職活動でも好結果を生んでいるようだ。

どのような進路指導、キャリア教育をしているのか、長聖の藤原弘介監督に聞いた。

↑ 2016年の長野大会を制した佐久長聖のメンバー。多くが今春、大学を卒業し社会に歩み出す

この春、大学を卒業するのは、甲子園の開幕戦で鳴門(徳島)と対戦し、2-3で惜敗した世代。プロに進む元山のほか、捕手だった宮石翔生(福井工大)は東海理化(愛知)、二塁手だった鈴木貴士(明治大)は東京ガスで野球を続ける。

そのほかのベンチ入りメンバーは、本格的に野球は続けないものの、エースだった小林玲雄(東洋大)が日本通運に進むのをはじめ、大手の生命保険会社や食品メーカー、県内の金融機関などへの就職が決まっている。

またベンチ外メンバーでも、消防や警察など高校時代からの夢をかなえた卒業生もいる。4番だった甲田尚大は医師を目指し、浪人を経て日大医学部で勉強しているなど、多種多様だ。

何を念頭に進路指導しているのか―
藤原監督(以下藤原) 入学してきたときに、野球部は2軸で行くと話します。高校時代にしかできない甲子園に行くということと、もう一つの軸は7年後、早ければ3年後に就職するという話をします。3年後には、進学でも就職でも受験があります。1年生の1学期の中間試験から、推薦とか3年後の評価基準が始まっていると話します。

高校入学でほっとしていられないー
藤原 こういった話を基本的には1年生のときに頻繁にします。そして2年生の11、12月当たりで進路面談をしています。将来的にやりたいこと、大学で野球を続けるか、など希望を聞きます。

そこで一番大事に考えているものは何か?それに対して「この大学ならこういうことができる」などとアドバイスしています。

その時点で希望は明確なのかー
藤原 だいたい生徒たちは高3の夏までは野球に集中したいと言います。ただし、その前に推薦入試に対する面談があったり、4年後(大学卒業後)の就職で資格が求められたりする場合の準備だったりをしないといけません。

この春大学を卒業するOBの中には、当時希望していた消防士や山岳警備隊(県警)への就職を決めた者もいます。

野球部員の進学率はー
藤原 ある大学の教授に毎年、なぜ大学に行かないといけないかという講演をしてもらっています。野球部員の進学は大学がほぼ100%です。今年の3年生は、専門学校進学はいても就職はいないです。

さらに野球を続けるOBも多いー
藤原 6、7割は上で野球をやっています。100回大会(現大学2年生)のOBは特に多いです。希望する進学先には卒業生がいるから、連絡して実情を聞いてみろと言っています。

野球を続けたい生徒に「お前じゃ無理」とは絶対言わないです。レギュラーになれなくても野球が好きだから4年続けることで、人脈ができたり、仲間が増えたりしますから。

高校、大学だけでもすごい広がりにー
藤原 高校では前後の2学年を含め、1学年約50人として250人ぐらいとつながりができます。大学でも前後の3学年で350人ほどとつながりができるので、高校から大学まで続けて600人近くが一緒の時間過ごしたことになります。このつながりは武器だと思います。

しかし誘惑が多い大学で野球を続けることは大変―
藤原 野球を大学で続ける場合も、4年間、野球部で最後までちゃんとやって〝OB〟として帰れるようにしろと言っています。3年で就職活動が終わったから4年になってからは部活動に出ない、ではなく、卒業してからも堂々とOB会に出席できることの方が大事と言っています。

続けることの意義は大きいー
藤原 野球をやっていた人が就職の面接に行って、〇〇大会で4番を打っていたという話はまったく役に立ちませんが、4番に行きつくまでの過程を面接官は知りたいと思います。

野球好きであっても嫌なことはあります。(中学~大学で)10年間継続したことは「すごい評価になる。継続する力があるのはお前たちの一番の武器だ」と話しています。生きていく中で高いと思える壁も、彼らからしたら、それまで大変だった思いと比べたら低く感じられるかもしれません。

大学3年の秋に自分で野球に見切りをつけようか、就職先はどうしようかと迷ったときに相談によく来ていますから説明します。最後まで野球をやった評価は後になって出ます。

(前任の)野球エリート校PL学園での監督時代もこうした考えだったのかー
藤原 PLで監督だったときもそうですが、野球ベースで考えると、その子が30、40歳になったときに多少野球がうまくても認めてもらえません。学力や人間力を野球と一緒くたにしていいのかとは思っていました。もともとPLは進路とかの面倒見も良かったです。

PL出身なので野球優先とイメージしてしまうー
藤原 ウエートは野球寄りで甲子園に出て勝つことが大きく見えますが、トータルで見ますと半分、半分、2軸で行っています。昨年夏は甲子園がなくなりましたが、2軸の一つが欠けただけなので、もう一つの軸で行かないと、と生徒には言っていました。とはいえ、(秋に)北信越で負けたら悔しいですよ。

野球を終えた後の将来が長いー
藤原 就職は人物を評価されていることなので、しんどいことをやってきて、頑張れることが求められているのかなと思います。せっかく預かったお子さんなので、将来を後押ししてあげたい。将来的なビジョンを伝えていくことも課外活動の一つだと思っています。

▼〝元山世代〟の長野大会決勝戦▼

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