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【高校】長野大会8日開幕 唯一不参加の須坂高校監督、復活へ思い新たに

第105回全国高校野球選手権長野大会は7月8日、セキスイハイム松本スタジアムで開会式を行い、開幕する。85校、連合を含む72チームが参加し、27日の決勝戦まで4会場で熱戦が繰り広げられる。

県高校野球連盟加盟校のうち、須坂高校のみが今大会の参加を見送った。部員は、3年生の女子マネジャー1人のみで男子選手がいないためだ。この4月、母校に異動し指揮官となった丸山雄三監督(29)は複雑な思いで夏の舞台を迎えることになった。

↓ この4月、母校・須坂高校に戻った丸山監督。いつでも練習を再開できるようにグラウンド整備が行き届いている

今年、創立100周年を迎えた須坂高校で、野球部にとっては寂しい夏となった。昨年夏までは単独での出場を続けたが、2年生選手(当時)1人となった昨年秋の大会は、出場を辞退していた。

丸山監督が同校野球部時代、同期は20人で、前後も学年15人ほどの部員は在籍。同校は、夏の大会は過去ベスト4が最高で、春秋の県大会にも数多く出場していた。

全県的な流れだが、その後、部員の減少が続いた。特に須坂高を含む須坂市内の高校の減少は著しく、須坂東も連合での参加が続いている。

丸山監督は、初任校の小諸で監督として5年目を迎えていた昨年秋、母校の欠場を耳にした。「これはまずいと思いました。綿貫(義文)先生(当時監督、現部長)がいらっしゃったので、戻って一緒に立て直したかったです。いずれ母校で監督になる夢もあったので、異動のタイミングでもあり戻ることにしました」と決断した。

その2年生選手は昨年末までに退部。選手0となった上での母校赴任となり、「今年度は厳しいと分かっていたが、誰かがやらないと野球部が終わってしまう」と、OBとして決意は揺るがなかった。

期待した新1年生に野球経験者は2人ほどいた。2、3年生にも声を掛け、練習体験には4人ほど訪れたが、入部にはいたらなかった。「部員が少なく、単独で活動できないのがネックになったようだ」と、少人数が悪循環につながっている。

同校は1学年240人(6クラス)で、学校規模的には決して小さくない。野球部とグラウンドを共有するサッカー部は、3学年で50人ほどの部員がおり、バドミントン部は40人程度が所属しているという。

地域随一の進学校だが、運動部活もしっかりできる環境にはある。丸山監督は「進路指導が充実していて進学率も高い。しっかり勉強しながら、部活もできるのが本校の良さ」と言う。

丸山監督は同校野球部時代、捕手として活躍。立教大でも野球を続け、大城滉二(オリックス)ら後にNPBに進んだ選手たちと一緒に練習してきた。

将来的に野球に携わりたい思いや、高校の恩師・中村成礼監督(当時、現上田東部長)へのあこがれもあり、高校の指導者を志した。大学卒業後、中野西で常勤講師として赴任し、松田一典監督(現長野吉田監督)の下、2年間高校野球を学んだ。この間、ドミニカ共和国に野球視察に訪れ、プレーを楽しむ原点にも触れた。

正規採用となり小諸で監督に就任。部員主導のチームづくりを推進するとともに、精神論に偏らない技術探究も重視してきた。激戦の東信で、春秋に県大会出場も果たしている。

自校が出場しないこの夏の大会では、高野連スタッフとして主会場の長野オリンピックスタジアムで連日のように運営に携わることになる。「自分の高校が出られないのは寂しさもありますし、うらやましさもありますね」と本音を明かす。

その一方で、「いつか部員がそろって、1勝を挙げて多くの方が喜んでくれることを想像すると、今からわくわくもしています」と、前向きに会場に足を運べそうだ。

丸山監督は公式のルートで中学校回りをするなど、須坂高野球部の魅力や監督として思いを伝えている。OB会も支援に積極的で、中学世代のチームで指導などに携わるOBたちの存在も心強い。

グラウンドは綿貫部長や女子マネジャーが整備に協力し、いつでも使える準備はできている。丸山監督は「一から自分たちでつくり上げる高校野球は価値がある。ほかの球児たちと絶対違う3年間になる、と新入部員には伝えたい」と、再出発を心待ちにする。

◇  ◇  ◇
今大会には18校が部員不足から5つの連合チームで出場している。慢性的に連合に参加している高校も少なくない。また単独チームでも、部員以外の〝助っ人〟を借りて出場するケースもこれまで少なくはない。今後、学校のさらなる再編が計画されている。志を持った若い指導者が存分に采配を振るえる場所が狭まっていくことが懸念される。

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