芦屋のマダムに飼われる日々—どこまで本当かわからない話(中)-[ビバノン循環湯 399] (松沢呉一) -3,967文字-
「孤児院から脱出して児童ポルノに出演—どこまで本当かわからない話(上)」の続きです。
芦屋夫人の奴隷に
神戸の未亡人のところに行くと言われて彼が連れていかれたのは芦屋であった。
「芦屋の豪邸でした。その人は当時で二四歳だったかな」
安岡君は彼女のことをおねえさんともオバサンとも言う。確かに子どもにとっては二四歳でもオバサンだ。
「最初に会った時に優しそうな人だと思ったことは覚えているんですよ」
しかし、これは最初だけだった。
「何人かお手伝いさんとかいたんですけど、そのうち来なくなって、掃除とか洗濯も僕がやらされる。自分なりにパンを焼いたりとか、食事を支度できるようにして。でも、そのうち、どうもおかしいなと思い始めた。きっかけになったのは二階のバルコニーから突き落とされたことです。そんなに高くはないし、わざと下を軟らかくしていたのかもしれないれけど、その時は打撲で済んだ。それからしばらくしたら、庭にプールがあって、“そこに入りなさい”って言われて、プールでバシャバシャやっていたら、頭を押さえられて沈められた。こっちは苦しくてもがいているのに、その人は自分のナニを触って、興奮しているんです。そこからエスカレートしてきた」
彼の仕事は、家事や掃除だけではなくなった。
「要するに、シモの世話ですね。手足を縛られて、なめさせられる。なめ方が下手だと、ムチで殴られたり、頭を押さえつけたりする。縄は天井から吊されていて、体をどんどん上げていったり、三角木馬に乗せられたり」
この豪邸には、そんなものまで置いてあったのだ。以前から彼女はこういった行為を続けていたことになる。
「ムチも軟らかいバラムチじゃなくて、硬いムチです」
乗馬ムチだと思われる。
「あとで聞いたんですけど、夫がいたんです。海外に仕事の拠点があるらしくて、帰ってくるのは1年のうちで一、二ヶ月くらい。お金はあるから、ホスト遊びもしたし、遊びはなんでもしたって感じらしい」
三角木馬では隠しきれないから、夫もこのことは知っていて、夫婦間でプレイをしているのかもしれない。
「僕はダンナには会ったことがないので、詳しくはわからないですけど、そうかもしれないですね」
それでもオジサンは神戸の未亡人と呼んでいため、安岡君にとっては引き続き神戸であり、未亡人である。
※Lewis Hine「Newsboy asleep on stairs with papers, Jersey City, New Jersey」
レストランでも犬扱い
最初は一ヶ月間ここで生活。夫がいない間だけだ。それからも呼ばれ、二ヶ月くらいのスパンで飼われることが十代になるまで続いた。
「この人のところには一年に二回くらい行きましたね」
調教は徐々にエスカレートしていく。
「二十歳くらいの若い男の人がやってきて、二人で一緒にムチを打ったり。“そこに座って見てなさい”って言われて、目の前でヤッてましたから、愛人かなんかなんでしょうね」
もちろん当時の彼はSMなんて知るはずもなく、意味もわからず、ただもう絶対服従を強いられた。
「食事と言っても、子どもですから、ロクなものは作れないじゃないですか。だから、その人は自分一人で出かけていって食事をして、僕は家でパンとかを食べて、掃除をして帰りを待つ。外出はほとんどさせてもらえなかったんですけど、近くにあるフランス料理か何かのレストランに連れていってもらったことはある。首輪をつけられて、鎖で引っ張られて。お姉さんは席があるんだけど、僕は地べたに座らされて、床に置いた食器で犬食いを命じられる」
(残り 2509文字/全文: 4026文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ