松沢呉一のビバノン・ライフ

風俗嬢の墓場みたいな店—名古屋系で働いた風俗嬢の報告-[ビバノン循環湯 521] (松沢呉一)

「なんか循環するか」と古い原稿を探っていたら、「監禁されたヘルス嬢」に出てきた歌舞伎町の名古屋系と呼ばれる悪質ヘルスについて書いたものが出てきました。全然覚えてませんでした。これはネットに書いたもので、たぶんまだ名古屋系なんて名称はなくて、名古屋資本であることやブルー系列であることはまるで知られていなかった頃だったと思います。2000年より前じゃなかろうか。とくに面白い原稿ではないですけど、「監禁されたヘルス嬢」の流れで出しておきます。

図版はすべてGoogleストリートビューから。歌舞伎町の写真はいっぱい撮ってますけど、自分が撮った写真を探すよりストリートビューの方が早い。もちろん、写真に写っている店舗は本文とは無関係です。

 

 

ひどい店の報告

 

vivanon_sentence去年、知り合いの風俗嬢とメシを食った時にすんごい話を聞きました。彼女はそれまで歌舞伎町にあるイメクラにずっといたのですが、あまりに暇だったため、店を移りたいと前々から言っておりました。彼女自身は人気があるのですけど、たしかにスタッフが変わってからは店は暇そうでした。

そんな時に、スカウトに声をかけられて、彼女は一番街にある新しい店に移ったのですが、ここがもうとんでもない店だったのです。

「忙しいと、“次は75分コースだから、45分で帰して”とか言うんだよ。早め早めに帰して、少しでも客を回転させようとする店はあるけど、いくらなんでも早すぎ。それも、フロントに客がいるところで、そういうことを言う。あんなの聞かれたら、二度と来ないよ。客は入っているんだけど、リピーターがすごく少ない。女のコに対して男子従業員が気を使ってくれるからまだいいんだけどね」

この店、一度も私は行ったことがないのですが、店名はよく知っています。場所がいいから客がフラリと来るのでしょうし、宣伝に力を入れて、一見さんを集める方針の店なんでしょうね。

「友だちにその店に移ったことを話したら、“なんであんな店に”って言われちゃった。評判が悪いみたい。一見さんが多いから、客質もすごく悪くて、今までの方がずっとよかった。個室も狭いし汚いし、声は筒抜けだし。松沢さん、絶対来ないでね」

この店には、彼女と一緒に前の店で働いていた友人のNちゃんも移っています。

「Nちゃんは、“この店の客は本番するのが当然と思っているみたい”と言っていた。私はスパッと“本番なしですよ”と言うから、それ以上しつこくされないけど、彼女は気が弱そうに見えるから、しつこく迫られる」

Nちゃんは気が弱そうに見えるだけじゃなく、実際に気が弱い。

「あの店のコたちは、相当本番をやっていると思うよ。隣の部屋から、“パコパコ”って聞こえてくるんだよ。女のコの声からしても、完全にやっているね、あれは」

「店はうるさくないのか」

「店も黙認だと思うよ」

目先に走る店ならではです。

 

 

熾烈な派閥争い

 

vivanon_sentence彼女とNちゃんは、コンドーム必着派。これが絶対条件で、2人とも相当の美人さんで人気もあるのに、なかなかいい店が見つからなかったのは、生主流の昨今、ゴム使用可の店が少ないためです。

「コンドーム使用可という話だったんだけど、その店、私たち以外は全員、生なんだよ。広告でも生を謳い文句にしているし。だから、フロントでも説明しているはずなのに、“生でさせろ”って客がすごく多い。今までは素股だってゴムをつけてやっていたのに、しょうがないから素股は生にした。“生フェラはNGなの。でも、素股は生だよ”ってついフォローのつもりで言ってしまってさ。でも、その店のお客さんたちは、フェラするだけで、すぐイッてしまう人たちばっかりだから、素股まで行き着かない(笑)」

バカテクだけのことはあります。

この店は女のコ同士の人間関係がまた殺伐としているらしい。

「シャワールームに行った時に、お客さんが“あれ、何?”って聞くので、見たら、台の上に個人用のボディソープが置いてあって、そこに“誰が使ったんだよ、殺すぞ”って書いてあった。この店、派閥争いがすごくて、二つの派閥が憎しみ合っている」

 

 

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