松沢呉一のビバノン・ライフ

旅行者1人当たりの支出は中国人が抜きん出ている理由—観光客に見る国の特性[後編]-(松沢呉一)

オーバーツーリズムを解消するために—観光客に見る国の特性[前編]」の続きです。

 

 

来訪中国人1人当たりの旅行支出金額746,591円、なのに1日の宿泊費平均が2,225円の謎

 

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前回出した国土交通省観光庁「訪日外国人消費動向調査/2023年1-3月期の全国調査結果には気になる点がありました。

「あれ?」と思ったのは、中国です。1人当たりの旅行支出金額が746,591円で抜きん出ている中国ですが、平均泊数は10.7日で、とくに多いわけではなく、ヨーロッパ各国やオーストラリアより少ない。

1日当たりの支出でも多いですが、抜きん出て多いとまでは言えない。数字が合わない。どういうことざんしょ。

この謎は、以下を見るとわかります。

 

 

最初に出した「1人当たりの旅行支出金額」の表は「全目的」の訪日外国人の集計です。あとは「観光・レジャー目的のみ」の集計です。つまり、こちらは観光客。

ここに出した表は「全目的」です。「全目的」には、観光客以外に、「業務、留学、親族・知人訪問等の目的の旅行者」のうち、1年未満の滞在者が含まれています。

「業務」は、母国の勤務先から日本に出張するなど、就労ビザと違い、支払い元が母国であり、かつそれ自体で報酬を生まないような会議や顔合わせのような内容を指します。新規店舗のオープンに立ち会うような業務まではこの範囲かと思います。

業務も親族や友だちを訪ねるのも90日未満の滞在です。ワーキング・ホリデイはたぶんここに入ってない。

「全目的」での1日当たりの中国人の支出は、1日1万円を切ってます。

 

 

宿泊費が1日2,225円。そんな宿に泊まっているのではなく、「業務」であれば会社の寮、「親族・知人訪問」であればそれらの人々の家にタダで泊まっているのが多いってことだろうと思います。全体の平均値をこうも下げるくらいに多いのです。

 

 

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