松沢呉一のビバノン・ライフ

姫カットを東洋起源とする韓国メディア・和服をアジアの伝統とする中国系団体—文化盗用とパクリ[13]-(松沢呉一)

韓国社会を揺さぶるK-POP業界の内紛と「パリパリ文化」—文化盗用とパクリ[12]」の続きです。

 

 

その後の姫カット

 

vivanon_sentence

前々からいたのか、最近急増しているのか相変わらずわからないのですが、姫カットを本当によく見ます。

先日は男子の姫カットを見ました。姫カット男子は全国に100人くらいしかおらず、うち95人はバンドマンです。その彼もそれっぽかったですが、楽器は持ってませんでした。楽器を持たないボーカリストです。楽器担当でも、ちょっと買い物に行く時は手ぶらか。

姫カットにするためには長い髪が必要で、私が「よし姫カットにするぞ」と思い立っても当面無理ですから、たぶん彼の姫カットは昨日今日のブームに乗ったものではないでしょう。

それはそうと、韓国人が「姫カットは韓国起源だ」と言い出したとの話が出ていて、すぐに検索したのですが、見つかりませんでした。軽く見ただけですので、言っているのがいるかもしれないですが、軽率な個人が言っているだけでしょう。

ここ数年、姫カットにしている韓国アイドルがいて、それが始まりだと思いこみ、検索することなくSNSで口走ったのがいて、すぐさまツッコミが入って削除したといったところか。

一方で、韓国でも、姫カットは平安時代の日本で始まったと記載している記事も多数ありますから、インターネットの時代は、それ以前と違って、荒唐無稽な論は広がりにくくなってましょうし、「韓国起源説」を恥ずかしいと感じる若い世代も増えています。「恥ずかしい」と感じる韓国人とは理解し合えます。

✳︎2023年11月20日付「AutoTribune」 2017年から、韓国の女優から始まって、姫カット・ブームがあったとの記事ですが、この写真の下に「東洋人の昔の髪型」との記述があります。

 

 

姫カットを「東洋人の昔の髪型」とする韓国メディア

 

vivanon_sentenceしかし、「東洋人の昔の髪型」(동양인의 옛날 머리 스타일)と書かれている記事は見つけました。国が特定されているのに、「東洋人」と表現するのはいかにも不自然。

「東洋」という言葉は「西洋」の対義語としてかつてはよく見ました。「東洋の魔女」とか。

「東洋最大」といった用例が典型であるように、「当面西洋には勝てないので、東洋に範囲を狭めておく」という意味合いがあったのでしょうが、その必要性が減って、東洋という区分けが厳然と残っているボクシングが公式に使用されている最後の例か。今だと「アジア・チャンピオン」にするでしょう。

それもそのはず、時に「東洋」はアジア全体を指します。ボクシングはこの意味であり、中東までが含まれます。一方で、時に中国、朝鮮半島、日本のみを指すことがあります。定義が曖昧すぎるのです。

範囲を曖昧にするためにはなお使う意味はあるとして、また、あえて古いニュアンスを出す言葉としては使い続けられるとして、曖昧ながら成立していた合意が消えていて、ほぼ死語になっています。

Yahoo!知恵袋にもこんな質問が。

 

 

「世界は西洋と東洋でできている」という世界観自体が消滅しつつあります。アフリカ大陸や中南米、オセアニアの存在を無視していますから、当然かと思います。

前に説明したように、姫カットはことさらに「日本が始まり」と主張するようなものではないと思いますが、「どこからどう始まったのか」を記述するなら、「日本が始まり」になるわけで、この場合に、曖昧にする必然性はありません。なのに、なぜ「東洋人の昔の髪型」なんて表現をするんでしょうね。

 

 

next_vivanon

(残り 809文字/全文: 2303文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ