「ヤリマン界の大谷翔平」は驚異の打率10割!!—福田光睦著『なぜ、私は誰とでも寝てしまうのか』の感想[1]-(松沢呉一)
前座が充実していたイベント
一昨日、高円寺パンディットで開催された福田光睦著『なぜ、私は誰とでも寝てしまうのか~令和女性10人のセックス黙示録』発売記念は満員盛況でした。ヤリマンは人気だな。
会場には、クニオさん(『マゾヒストたち』参照)も来ていて、イベント開始前に、東日本大震災が起きた日のことを聞きました。クニオさんはストリップが好きで、全国の劇場を回ってます。その日は、埼玉県のストリップ劇場で開かれていたSMの出し物を観に行っていました。ストリップとSMと、好きなものが二つ合体。
たいていのことを受けられるクニオさんはステージにも上がれるM役として重宝されて、その日も、ステージで全裸で縛られてロウソクを垂らされている時に揺れがきたそうです。「逃げろ」と言われても逃げられないです。なんとか縄をほどいて外に出ても、チンコ周りをピアスだらけにして、頭はロウで固まった全裸のじいちゃんがいたら、混乱に拍車をかけたでしょう。「どうやったら、地震であんなことになるんだろう」と。
結局、揺れが落ち着くまでそのまま縛られていたそうです。女王様にいたぶられて死ねれば本望と考えるM男さんは少なくないでしょうが、ビルが倒壊して圧死するのはイヤでしょうね。
クニオさんはネタの宝庫で、『マゾヒストたち』であれだけ話を聞いてますし、それ以降も繰り返し聞いてますが、それでも、次々と面白い話が出てきます。
ソープランドの「お別れ会」
閉店することになったソープランドの「お別れ会」の話もよかったです。クニオさんは性豪であり、吉原にも通い続けたソープランドがありました。確かオーナーが亡くなったためだったと言っていたはずですが(法人化していないと、名義人が亡くなった段階で営業許可は取り消し)、その店が閉店することになって、最後に店内で経営者、従業員、ソープ嬢、常連客にまでが50人以上が集まって、お別れ会が開かれたそうです。
「女の子の中には子どもや孫を連れてきているのもいたね」
孫のいる女の子。年齢が高めの店だったのでしょうが、17か18で妊娠して結婚、出産後間もなく離婚し、性風俗に飛び込むのはよくいて、40代で孫がいても全然おかしくない。一人で子どもを育てている場合、どこかの段階で子どもに仕事のことを教えることも珍しくないし、娘がまた性風俗で働くこともありますが、客のいる場に子や孫を連れて行くのは皆さんこれが初めてだったのではないか。
待合室で居合わせることがあるにしても、客同士で面と向かって話すのは初めてだった人も多いでしょう。名刺交換したりして。常連さんたちも高齢者が多く、この建物を舞台にした物語はもう最終回が終わって、この会は打ち上げですから、客の間で嫉妬心が生じないし、もう先がないので誰に対しても隠す必要がない。
しかし、「最後にパーッと楽しくやりましょう」というわけにもいかず、しんみりとした時間だったそうです。帰りに頬を濡らした人もいそうです。どの立場であれ、思い出すことはさまざまあったでしょう。
といったように、一昨日のイベントでは笑いあり涙ありのお話を聞くことができました。
話が終わっちゃいましたが、言うまでもなく、本編も充実してました。
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