松沢呉一のビバノン・ライフ

「大気汚染が自殺に影響する説」は信憑性がありそう—なぜ中国は「男より女の方が自殺者が多い国」なのか[付録編]-(松沢呉一)

なぜ中国は「男より女の方が自殺者が多い国」なのか」を書く過程で発見した説についてまとめました。

 

 

大気汚染と自殺の関係についての韓国の研究

 

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「大気汚染が自殺を増加させる」という研究結果が2015年に韓国で発表されています。

 

2015年4月1日付「中央日報

 

これはいい視点だと思いました。今まで私が知らなかった分、斬新というところが「いい視点」ということですが、「本当かな」と疑わないではいられません。韓国は大気汚染(PM2.5)の原因を中国に押し付けたがりますが、中国は韓国国内の汚染が大きいと指摘しています。どっちもありましょうが、しばしば韓国は他国に責任を押し付けすぎです。

この研究も、韓国は自殺率の世界トップであることまでを中国のせいにするための政治的意図に基づくものではないかと最初は考えてしまったのですが、その内容を読むと、「あり得る」と思い直しました。

 

研究チームは「粒子状物質やオゾンのような大気汚染物質が中枢神経系の免疫体系と神経伝達物質をかく乱したり、持病を悪化させる」とし「これによって鬱になり、瞬間的衝動性が悪化する」と説明した。大気汚染が続けばストレスホルモン分泌を促進して気分障害を起こし、自殺を引き起こすということだ。特にオゾンの場合、セロトニン代謝に悪影響を及ぼすため自殺の危険を高めるという。

 

セロトニン不足は鬱を引き起こすと言われています。セロトニンは健康食品として、その辺のドラッグストアに売られていて、私も不眠解消のため、服用していたことがあります。睡眠薬のような即効性はないですが、長期で見ると睡眠が安定するように思いました。

大気汚染が進行して、日光を十分浴びることができなくなると、セロトニンが体内で作られにくくなって、睡眠障害や鬱を発症することは十分考えられます。陽射しが差す時間が多い地域と、少ない地域の自殺率の比較までやると、さらに大気汚染と自殺の関係がわかるかもしれない。北欧の自殺の多さは気温の低さで説明されることがありますが、太陽の光でも説明でき、その方が正しいかも。

ただ、他の要因を排除して、そこだけを比較するのは難しい。また、長い間、そういう環境で暮らしている人は耐性ができていたり、日光浴を盛んにするなどの対策が生活に組み込まれていそうで、その点でも比較は難しそうですが、調べる価値はありましょう。

 

 

中国を対象とした同様の研究

 

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同様の調査はないだろうかと思って探してみたら、ありました。

 

2024年2月12日付「nature sustainability

 

 

 

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