原発処理水の海洋放出に対する韓国と中国の差—「イエス ジャパン(예스 재팬)」はこんなところにも影響している-(松沢呉一)
福島原発の処理水放出に対する韓国の姿勢
私は原発に反対でありますが、今回の処理水(汚染水)放出については積極的に反対する点を見いだせないでいます。現状、環境省の調査では安全な数値ですが、今後はどうなるのかわからないと考えないではないのですが、反対するにはそれ相応の裏付けが必要で、そんな裏付けはないので反対はしません。積極的に支持することもないですが。
というのが私のスタンスですけど、ここでは処理水放出の是非を論じたいのでなく、これに対する韓国の反応を見ていくのが主題です。
4月以降、韓国政府は処理水放出に反対してきました。これがはっきり変化し始めるのは、7月に入ってからです。7月4日、IAEAのラファエル・グロッシ(Rafael Mariano Grossi)事務局長が訪日し、安全宣言と言っていい報告をします。
グロッシ事務局長のTwitterアカウントには韓国からの多数の嫌がらせコメントがつきます。これは野党の民主党支持者がやったものだとされています。
グロッシ事務局長は7月7日、韓国にも行って同様の説明をしているのですが、正義党、進歩党、民主労総は金浦国際空港で抗議のデモをして、グロッシ事務局長は2時間空港で動けなくなってます。
以降も、左派は処理水放出に反対の姿勢を維持しますが、原子力や放射能の研究者たちから、IAEAの方針を支持する意見表明がなされ、トリチウムは原発の通常運転でも放出されており、韓国は日本以上のトリチウムを放出していることが明らかにされます。
尹錫悦大統領と「国民の力」の決意
7月11日。韓国政府は、処理水の放出は安全であるとの広報動画をYouTubeに発表して、物議を醸します。
オリジナルはもう削除されたのかもしれないのですが、以下でだいたいわかります。
尹錫悦大統領を擁する「国民の力(국민의힘)」の支持者たちはおおむね納得。野党はおおむね反対とはっきりと姿勢は色分けされていき、野党はこれを反日運動として高めようとしますが、あくまで処理水の問題に留まった感があります。
7月24日に処理水放出が始まり、野党は激しく反発するのに対して、尹錫悦大統領は「1+1を100と言う勢力と闘う」と強く野党を批判。
どちらの支持者であっても、国民の不安は残りつつ、海産物を含めて、いつものような禁輸や不買にはつながっていません。
中国は平常運転
中国では、7月中は官民一体で日本叩きを進めてきて、処理水放出開始以降、日本からの海産物を輸入禁止とし、日本への嫌がらせ電話が各所にひっきりなしでかかってきて、国内ではフェイク動画が拡散され、その結果、日本産と無関係な海産物も忌避されて、海産物を扱う小売店や食べ物屋は閑散とし、国内への悪影響も出ています。
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