松沢呉一のビバノン・ライフ

卵かけご飯(TKG)を「料理」たらしめたふたつの要因—日本の卵が優秀なのは衛生管理の徹底だけではない[後編]-(松沢呉一)

香港と韓国の違い、卵かけご飯と醤油卵ご飯—日本の卵が優秀なのは衛生管理の徹底だけではない[中編]」の続きです。

 

 

韓国自慢の「醤油卵ご飯」のルーツは日本の「卵かけご飯」らしいですよ

 

vivanon_sentence韓国のブログや掲示板の類では的確なことを書く人たちも多いのに、メディアになると前回見たような「歪んだ愛国心」「いじましい民族主義」を顕にして、根拠なき自画自賛やコンプレックス丸出しの起源主張が始まります。そうした方が潜在的反日愛国者に受けがいいからでしょうし、韓国では、個人ではなく、集団として発言するとこうなりがちです。国家や民族を背負うのです。個人が確立されていない国ならでは。

パクリもウソもへっちゃらな厚顔愛国心についてはうんざりしますが、悪い面だけを出すと勘違いされそうなので、まともな意見も見てみましょう。

以下は、グルメ・サイト「82cook」の掲示板です。

 

 

スレ主は「卵と醤油をかけたご飯を小さい頃から食べていたし、今も食べるが、これはどこからきたのだろう」と書いています。「醤油卵ご飯」についての質問でしょうが、コメント欄では生卵に言及されています。

飯を食う時に大事なのは美味いかどうかであって、わざわざ起源を考えることなんてないし、とくに貧乏飯では、「起源は貧乏」ってことでしかないような。ご飯におかずの卵焼きをのせることも、スクランブルエッグをのせることも、味噌汁をかけることもあるでしょうが、そんなん、自然発生するものでしかなくて、起源を確定させることは不可能。

対して、生卵をおかずにご飯を食べることはないですから、生卵をかけることは、それらとは一線を画しますが、起源を確定することは同じく容易ではありません。検索したら、遅くとも明治時代には食べられていたので、軽く一世紀以上になります。

それでもいつ頃から食べられていたのかを知りたくなろうことはあるでしょうが、結局は「始まりは日帝時代」という意見が主流。この時代は生卵だったかと思います。この頃には日本で広く、かつ日常的に食べられていたでしょうから、伝わらないわけがない。

だから、前回見たテレビ番組ははっきりとルーツを言えなかったんですね。反日派は日帝残滓として二度と「醤油卵ご飯」を食べられなくなりますから。

しかし、韓国ではバターを入れることがよくあって、「日帝時代はバターなんて食べられなかったので、朝鮮戦争で米軍からバターが入ってきて以降ではないか」との少数意見もあります。日帝時代に移入され、バターを入れるようになったのが朝鮮戦争以降だったのでは? こんなの、朝鮮戦争前の記録を探せばいいだけだと思うんですが、日本がルーツであることを確定させたくないのでしょうか。

私は卵かけご飯にバターを入れたことはないですが、子どもの頃はバターをご飯にのっけて食べていたことはあります。普通におかずを食べる際のご飯がバターライス。生卵と合わせても美味しそうですが、貧乏飯である卵かけご飯を食う時は併合時代の韓国と同じです。

✴︎2023年4月20日付「예쁜밥」 料理ブログ。この「醤油卵ご飯」はバター入りで、卵はスクランブルエッグですが、筆者はおそらく年配の人で、小さい頃は生の卵だったようです。テレビは意味のない主張をするより、どこからどうしてそうなったのか、食中毒対策であれば「だったら日本やヨーロッパのような厳格な衛生管理をすべきではないか」という提案をした方がいいのに。事実や安全性より、民族の空疎なプライドが大事な愛国テレビでは無理か。

 

 

next_vivanon

(残り 1366文字/全文: 2858文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ