辛い料理の効用とリスク—日本の卵が優秀なのは衛生管理の徹底だけではない[追加編1]-(松沢呉一)
「卵かけご飯(TKG)を「料理」たらしめたふたつの要因—日本の卵が優秀なのは衛生管理の徹底だけではない[後編]」の続きです。
ネパール居酒屋を大推薦
食い物は、それぞれの風土、文化、人間に合わせて発展したのですから、どれが上、どれが下ってことはなく、多くの場合、自分の食べてきた食い物に舌が規定されていて、慣れ親しんできた食べ物を美味しいと感じるものです。もちろん、「人間だからね、たまには違うものを食べたいね」(tuki.「晩餐歌」)。
では違うものを食べて美味しかったと満足したからと言って、次の日も食いたいかと言えばそうはならない。たまに食うから美味いのです。
最近食べたもので、無茶苦茶美味かったのは、「月刊 生き違い新聞」第2号のあとで行ったネパール居酒屋です。ひとつかふたつははずれがあっても怒らないのに、食ったものが全部美味い。
実際のネパールで食う料理はあんまり美味しくないです。ネパールの餃子であるモモはまあま食えますが、新鮮な野菜が入手しにくく、ヒンディーなので牛は食えず。でも、水牛は牛とは別枠なので食えるのですが、筋張っていて、食えたもんじゃないです。
でも、ネパール居酒屋は高円寺にありますから、食材が新鮮で豊富です。これまでにも日本でネパール料理を食ったことはあるのに、もっとも美味しかったです。ネパール料理ではないネパール風料理も多いためかも。ネパール料理のイメージが一変しました。
次回の「月刊 生き違い新聞」の後も行くと思いますので、行きたい方はご来場ください。
とくに私はネパール風焼きそばが気に入りました。メチャ味が濃くて、白いご飯が欲しくなりますが(笑)、具材の薄い卵焼きが清涼剤のような役割を果たしていて、心が安らぎます。しかし、調子に乗って次の日も食うと、「もういい」になりそうです。
✴︎食べログより「祭り太鼓」高円寺店 働いているのはネパール人ですが、店の入口も内装もネパールらしさは皆無。その点でネパールを期待すると失望するかも。
辛い料理が求められる理由
ネパールはまだしも薄味の料理があるので逃げ場がありますが、インドとなると逃げ場がなくて、3日もすると、マクドナルドやケンタッキーに行きたくなります。タイ料理だと1週間続けて食べられますし、日本アレンジされたインド料理だったらなんとか我慢できますが、本場のインド料理は何を食っても同じ味になってきついですわ。
辛味の強い料理が発展した事情には大きくふたつの理由があります。ひとつは寒い地域で、体を温めるためです。もうひとつは暑い地域で、食中毒を防ぐためです。中国の四川料理は、冬が寒くて、夏は暑い場所だから発達したと言われています。
辛味は殺菌効果があるとされるので、暑くて湿度の高い夏に食べるのは筋が通っていますが、日本でのわさびや山椒の使い方のように、少量を使う分にはいいとして、全体を辛くする料理は、食中毒防止とは逆の効果も発揮されてしまいます。素材が傷んでいることがわかりにくくなるのです。
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