松沢呉一のビバノン・ライフ

北京出身者は北京料理以外の中国料理を認めない(人にもよる)—日本の卵が優秀なのは衛生管理の徹底だけではない[追加編2]-(松沢呉一)

辛い料理の効用とリスク—日本の卵が優秀なのは衛生管理の徹底だけではない[追加編1]」の続きです。

 

 

中国料理は一言では語れない

 

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ネパールはそんなに大きな国ではないので、ネパールの料理をすべて「ネパール料理」でくくってもそんなに間違っていないと思います。日本も細かく言えば地域差があるにしても、「日本料理」でくくってもいいでしょう。くくり切れないのは沖縄くらいか。

しかし、中国となると国土が大きすぎ、それぞれに風土も民族構成も食材も違うので、そんなに中国の料理を知っているわけではない私でも、「中国料理」でまとめるのは無理があると思うし、まして「日本の中華料理」は別物です。

四大中国料理、さらには八大中国料理とも言いますが、それでもこぼれる地域があります。遼寧省吉林省黒竜江省の東北部甘粛省新疆ウイグル自治区など北西部は他地域とははっきり違う特色がありますが、どちらも、八大中国料理に入れられていません。

日本人としては、「同じ中国だから、なんでもええじゃろ」と思ってしまいますが、そうはいかないと実感する話を先日中国人に聞きました。

「日本に来て、日本の食べ物に抵抗はなかったんだけど、何を食べても物足りない。日本料理だけじゃなくて、イタリア料理も同じ。日本の人はパスタやピザが好きでしょ。あれも物足りない。お腹いっぱい食べても満足できない。日本の中華も全然美味しくない」

「池袋は現地の味が味わえるって言われますよね」

「何度か行きましたよ。でも、池袋は東北料理の店が多いので、私は全然ダメです。北京人には辛くてしょっぱすぎるんですよ。北京にも東北料理の店はありますけど、東北出身者が多いからで、北京の人はあんまり行かないと思います」

「東京にある東北料理の店も、客は東北出身者が多いんですかね」

「そうだと思いますよ。日本に来てからしばらくは故郷の味が無性に恋しくなりますから、留学生が多いんじゃないですか」

ぶっちゃけ、大都会である北京の戸籍を持っている人にとって、東北や北西部は韓民族ではない民族も多い貧しい辺境であり、しばしば差別の対象です。そんな下卑た料理を積極的に食おうとは思わないってこともありそうですが、そんな意識がないとしても、別の国の料理みたいなもんですから、舌が合わない人がいるのはよくわかります。

✴︎食べログより「永利」 池袋本店。池袋にも北京料理、上海料理、四川料理の店はあるのですが、「マジ中華」と言われる店は東北料理が多い。「永利」も東北料理。たまに食う分には美味しいです。

 

 

北京料理は上品

 

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狭い日本でも、「沖縄料理は美味しくない」と感じる人もいますから、まして中国の人はそうなります。「関東の味つけは濃すぎてしょっぱい」と感じる関西人がよくいるように、薄味に慣れていると、濃い味はきつい。比較的北京料理は薄味です。あくまで「比較的」ですが。

「じゃあ、四川料理もダメじゃないですか」

「はい、香辛料が強すぎます」

「北京でも八角や山椒は使いますよね」

「とくに八角は使いますけど、使いすぎるとくどくなる。八角は肉の臭みを消すのに使うので、八角の形のまま入れてすぐに取り出してちょうどいいのに。最後まで入れっぱなしの店もあります。あれだとせっかくの肉の味がわからなくなります」

 

 

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