中国人も生卵を食べる。ただし、現在の北京で食べるとしたら四合院の住民くらいか—日本の卵が優秀なのは衛生管理の徹底だけではない[追加編3]-(松沢呉一)
「北京出身者は北京料理以外の中国料理を認めない(人による)—日本の卵が優秀なのは衛生管理の徹底だけではない[追加編2]」の続きです。
生卵を食べる中国人もいる
昨今は日本料理が浸透して刺身や握り寿司を食べるようになっていますが、中国では伝統的になんでも熱を通して食べます。となると、生卵なんて食うはずがないと思ってました。
でも、思い込みはよくないので、中国人に聞いてみました。
「中国では、生卵を食べないでしょ」
「食べますよ」
あら。
「家庭によると思いますが、うちの家族はみんな食べてました。私が子どもの頃は、鶏を飼ってまして、朝、まだ生暖かい卵をとってくるんですよ。糞がついているので、それを洗ってから割って、牛乳を入れてかき回して飲むと美味しい」
おー、ミルクセーキです。
「牛乳を入れずに、そのまま飲んだり。朝、それを飲むと健康にいいって言われてましたね」
「それを毎日」
「いや、毎日ではない。雌鶏を1羽買ってきて飼っていただけなので、1日1個しか産まれない。それを家族で分け合うので、何日かに1回ですよ」
「じゃあ、鶏を飼っていても、全然足りない」
「そう。料理に使うのは市場で買ってきます。でも、市販の卵は新鮮じゃなくて、うちで産まれた卵じゃないと生はダメだと言われていたので、鶏を飼っている家の特権だったかもしれない」
産みたてだと、中にサルモネラ菌が入り込んでいることはごく稀なので、殻を洗えば限りなく安全なようです。
✴︎日本料理店に食材などを卸している上海の「峰二食品」のサイトより、「日本の卵はなぜ生で食べられるのか」を説明したもの。中国の日本料理店でも生卵は提供されていて、これは低温殺菌の卵。文中に「おばあさんから子どもの頃の卵は生で食べられたという話を聞いた」とあって、なぜ昔は食べられたのかの説明はないのですが、産みたてだったからでしょう。
おそらく今も北京で生卵を食べている人はいる
私の子どもの頃は、庭に鶏舎のある家はありましたし、通っている小学校でも鶏を飼っていたことがあります。卵はどうしたんだべな。用務員のおっちゃんが生で食っていたのかな。
しかし、騒音に神経質な人が増えていますから、都市部で飼っている家庭は皆無でしょう。
「少なくなっているでしょうけど、あるでしょうね」
「アパートだと飼えないですもんね」
「そんなに広い場所はいらないので、ベランダで飼おうと思えば飼えるでしょうけど、雄鶏ほどではないにしても、雌鶏も鳴きますから、隣のうちからクレームが来ますよ。でも、北京でも、下町に行くと、共同住宅が残っていて、そういう共同住宅は他の住民と仲良くしていることが多いので、鶏を飼うことがあるかもしれないですね」
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