松沢呉一のビバノン・ライフ

「遺体ピース騒動」が明らかにした美容整形医たちの「医の倫理綱領」違反—過整形の原因とその弊害-(松沢呉一)

黒田あいみ・東京美容外科沖縄院院長に対する適切な処分—世界の医療系バカッター」の続きです。

 

麻生泰を褒め称える

 

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あけましておめでとうございます。

例年、大晦日は銭湯に行くのですが、風邪が治らないので、昨日はパス。代わりになんか書いておくかと思ったのですが、年を越えでしまいました。どのみち、年末に相応しい話題でもないので、いつ出してもいいべ。

 

つくづく思うのは、麻生泰って偉い人だなあってことです。自己承認おばけの部下を解任することで形だけは責任を取らせ、実際には配下に置いたまま、自身は誤った認識を気が狂ったように投稿する炎上おばけと化して、批判をすべて集めています。なんちゅう部下思い。これがベストの方法だと思いますが、普通はそこまで自分を落とせない。

黒田あいみさんがよその病院で働くことは絶対に避けて欲しい。解雇されて、美容整形以外の診療科で採用されることはよもやないでしょうが、盲腸で病院に行って、ピースサインをした女医が出てきたら、「遺体を増やそうとしているな」と震えますよ。

彼女のことは麻生泰さんが今後も守り続けていただきたい。大半の患者は東京美容外科から離れるでしょうが、「遺体の前で笑顔でいられるくらいに朗らかな医師に診てもらいたい」「遺体を弄ぶ話を聞きたい」という人たちも世の中にはいますから、東京美容外科は、そういう人たちが集う化け物屋敷として栄華を極めればいいでしょう。

あとは、彼らが献体をしようとしていた人たちを躊躇させたことで、医学会全体への悪影響、さらに拡大するなら、人類の未来を閉ざしたかもしれないことに対する責任をどう取るのか、また「美容整形医は異常な医者だらけ」と知らしめたことで、美容外科全体の評判を落とした責任をどう取るのかが残ります。

医師法第七条。

 

第七条 医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一戒告
二三年以内の医業の停止
三免許の取消し

 

第四条は以下。

 

第四条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三罰金以上の刑に処せられた者
四前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者

 

黒田あいみさんは第七条の「医師としての品位を損するような行為」に該当しますので、「戒告」「免許の停止」「免許の取り消し」がなされてもいいでしょう。

 

 

医学における倫理を再確認する

 

vivanon_sentence通常の会社員や公務員であれば、非違行為の中で、違法行為に比して倫理違反の位置付けは低いかと思いますが、医業においてはより重視されそうです。

以下は、日本医師会の医の倫理綱領」。

 

 

献体自体が、この倫理に基づく崇高な行為と言えて、それを踏みにじった黒田あいみさんやあの場にいた医師たち、その管理をする麻生泰さんは完全にアウト。

しかし、免許取り消しは相当にハードルが高くて、例えば刑事事件を起こしたところですぐさま免許取り消しになるわけではありません。懲役刑にでもならない限り取り消しにはならず、執行猶予がつくと「半年間の免許停止」程度だったりします。これは私の知っている範囲での実例です。

もちろん、雇われの医師だと、それぞれの医療機関の規定による処分がありますから、他のクリニックであれば黒田あゆみさんは解雇だったとしてもおかしくないですが、免許が取り消されない限り、化物屋敷に隔離するのが最善です。

診療中に患者に猥褻行為をするなど、業務中の犯罪は重い処分になり、執行猶予がついても免許取り消しになりそうですが、今回は患者不在の技術向上の場であり、刑事犯罪でもないですから、仮に処分があるとしても免許取り消しまでは至らないだろうと予想します。わからんですけどね。あとは、整形関連の学会からの強制退会といった各団体の処分でしょう。

 

 

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