松沢呉一のビバノン・ライフ

朴裕河・渡邊真衣・新井祥子に対する判決はすべて納得できる—りりちゃんに対する判決が重すぎると言っている人は他の詐欺犯への判決を確認すべし-(松沢呉一)

 

朴裕河・世宗大学名誉教授の無罪が確定

 

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昨年10月、朴裕河・世宗大学名誉教授に対する名誉毀損事件につき最高裁は無罪を示した上で高裁に差し戻し、差し戻し審で高裁は無罪判決を出し、検察が期限までに再上告しなかったため、このほど無罪が確定。

 

 

朴裕河著『帝国の慰安婦』は、邦訳も話題になりましたが、研究者によって資料と証言をもとに、真摯な姿勢で書かれたものであり、当然議論はあっていいとして、刑事で裁くようなものではありません。

最高裁が「学問的主張、意見の表明に留まり、虚偽事実の記載にはあたらず、自由な討論などを通じて検証されることが望ましい」としたのは当然であり、起訴した検察、有罪判決を出した高裁が決定的に間違ってます。こんな裁判に8年半もかかったことは、韓国には表現の自由も学問の自由もなく、韓国の司法がまともに機能していないことを明らかにしていると絶望しないではいられなかったのですが、ぎりぎりのところで面目を保ちました。

慰安婦は日本軍と同志的関係にあった」といった記述が虚偽だとされたわけですが、未来永劫金をせびろうとしている韓国左派は、著者が日本政府に賠償金を求めるのは法的根拠がないとした点も気に食わなかったのだろうと思います。

左派の嫌がらせに屈することなく闘った朴裕河名誉教授を支持する研究者も出てきていますし、とくに若い世代への影響は大きく、この8年半は無駄ではなかったと思いたい。

しかし、韓国の司法は政治に左右されやすく、この判決も尹錫悦大統領によるところも大きいのかもしれない。だとすると、政権が交代したら、また韓国の司法は暗黒時代に戻りかねず、「共に民主党」に煽られた国民はまたも日本製品不買運動に邁進しかねない。

✳︎朴裕河著『帝国の慰安婦』 この本についてはしっかり論じたいと思いつつ、ここまでほとんど触れないままでした。そのうちやります。

 

 

世界の平和を守る人妻JK魔法少女りりちゃんに懲役9年の判決

 

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続いて国内の裁判。

 

 

りりちゃん、大人気。

ちょっと前に、知人らに「中嶋涼子とは友だちになれないが、りりちゃんとは友だちになれそう」と言っていたのですが、犯罪はけしからんとして、ああいうバカっ子は慣れているので、シャバに戻ってきたら、友だちになってもいいです。

バカっ子との接点がないとわかりにくいかと思いますが、懲役刑を食らって、「やり方が稚拙すぎた」と反省することはあれども、ああいうタイプは懲役くらいではあんまり変わらんです。

判決に至るまでの報道では、「彼女は親の暴力を受け、ホストに優しい言葉をかけられて担当に入れ上げた被害者だ」との論調が見られ、「女はいつでも被害者」ってわけです。これを過剰に強調したがる人々は、「女は主体になれない」という揺るぎない思想を持っています。いなば食品のあれこれも、「稲葉優子会長が悪いのでなく、夫の稲葉敦央社長に命じられていただけの被害者だ」と言い出すのがいそうで怖くなります。

そもそも渡邊真衣のチープな囁きとチープな演技に騙される男らも、彼女が語る窮状を聞いて、「かわいそうなりりちゃんのために俺様が助けてやらねば」と騎士気取りになる人たちであり、渡邊真衣を被害者扱いする人々と通底しています。騙された男らに同情する気にならんけど、こっちは本当の被害者。

加害者に同調する人たちの中から、「懲役9年は重すぎる」という声が出ています。私も求刑13年は重いと感じましたが、詐欺ではしばしば争点になる「最初から騙すつもりだったか否か」については疑問の余地がない点、不特定多数に向けてマニュアルを販売したことが幇助として悪質である点、この二つに脱税が加わったことから、「そんなにおかしくないか」と納得。

 

 

詐欺の判決2例

 

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今回の判決が重いと感じる人たちは、詐欺罪は重い犯罪であることを理解していないのだと思いますので、いくつか例を出しておきます。

 

2024年3月19日付「NHK NEWS WEB

 

 

虚偽の申請で持続化給付金4,900万円を騙し取って、懲役7年の実刑判決。渡邊真衣が騙し取ったのは1億5500万円ですから、3倍以上。しかも、渡邊真衣は教唆と脱税がありますから、懲役9年は妥当では? 渡邊真衣の懲役9年が重すぎると言う人たちは、こちらも重すぎると抗議すべし。

 

 

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