松沢呉一のビバノン・ライフ

野生化した鹿で奈良公園化を狙う韓国スンチョン市—どこをとっても無理なので、やめた方がいいと思うな-(松沢呉一)

 

鹿のテーマパーク計画?

 

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朝鮮日報」はまあまあ読んでいるのですが、韓国全羅南道スンチョン市で、奈良公園を真似て、鹿のテーマパークを作る計画が持ち上がっているとの記事を読んで、「今の韓国を象徴しているな」と思いました(日本語版「朝鮮日報」には移植されてません)。

スンチョン市にかつてあった鹿農場が20年ほど前に廃業、その際に農場が飼っていた4頭から5頭程度の鹿が逃げ出して、現在60頭ほどに繁殖。市内の奉化山新たに造設された、1,200戸を超える団地に鹿が出没し、市当局はその処遇に頭を悩ませていて、鹿のテーマパーク計画が持ち上がっているという内容。実現性はあまりなさそうですが、十分な検討をしないうちにぶち上げるのがまず韓国らしい。

つまりは奈良公園をパクるって話ですが、こんなもんはパクっても問題なし。韓国では札幌の雪まつり紋別の流氷まつりに似たイベントをやっていて、類似した祭りは世界中にあります。こういったイベントは一国が独占できるようなものではありません。むしろ、市当局者が「奈良県のように」と明言しているのが今の時代らしいと思いました。

例えば「かっぱえびせん」をパクった「セウカン」を発売した際に、「日本のカルビーのお菓子のような新製品です」なんて決して言わず、「苦労して当社が開発しました」と嘯いていました。音楽であれ、漫画であれ、アニメであれ、「日本の○○をリスペクトして」「日本の○○にインスパイアされて」なんてことは決して口にしませんでしたが、今はすぐにばれて叩かれることはここまで見てきた通り。奈良を訪れた韓国人観光客が増えてますから、もう隠しようがなく、最初からそのことを認めるしかなくなっているのが今の時代らしい。

✴︎2025年2月24日付「朝鮮日報

 

 

観光資源が乏しい韓国

 

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コメ欄がまた今の韓国らしく、ひとつとしてテーマパークに賛成、歓迎するコメントはなく、「不器用に他人の国の真似をすると事故が起きる」「大騒ぎしながらまた鹿公園とか言いながら税金を無駄にしないで!」と批判されています。国民も、韓国が安易に他国(とくに日本)を真似する習性をよくわかっています。その反省が始まっているのは好ましい。

安易に真似することとともに、韓国では計画性がないまま、見切り発車する習性もまた批判されていそうです。韓国は観光資源が乏しく、そのため、観光客がリピートしないことを克服することが課題になってます。K-ドラマの撮影地の聖地巡りは一回でおしまい、K-POPコンサートで人を呼ぶのはK-POPアイドルの凋落とともに頭打ちです。

韓国最大の観光地である済州島はぼったくりで有名になって、韓国人も敬遠するようになり、来訪者は減少傾向にあります。「チェジュに行くなら、日本に行った方がいい」と。今年の旧正月は、韓国政府は内需拡大を図って、公休日を増やしましたが、内需は増えず、日本旅行に出る韓国人が増えてしまいました。

恒常的に人を呼び、国内需要を高める観光スポットとして、各種テーマパークが建設されましたが、多額の税金を投下しながら、どこもあまりうまくいっておらず、短期で閉園したテーマパークもあることを踏まえて、「税金を無駄にしないで!」と批判しているわけです。

交通手段の充実、宿泊施設の確保、他の観光祖ポットとの連携などの条件を満たす必要がありますが、そういった検討をせずに、とくに見どころのないテーマパークを作れば失敗するのは必然です。得をしたのは高値で土地を売った地主や工事を請け負った業者、そこからのバックマージンを受け取った政治家や役人だけ。

✴︎Wikipediaより。右下の島が済州島。スンチョン市の南南西に位置

 

 

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