マナー講師とポリコレ・コンサルに共通する手法—「赤いきつね」のCMを批判した連中は「女は人前で食事をするな」と主張しているに等しい-(松沢呉一)
マナー講師とポリコレ・コンサル
スウィートベイビーにからめて指摘したように、ポリコレ派コンサルの問題は、ほとんどの人が合意できる企業の採用や労働環境における性差別、人種差別、障害者差別、同性愛者差別の改善に留まらず、表現物の内容まで踏み込んだことにあります。アニメ、映画、ゲームのように、表現物を制作、販売する企業をポリコレ・コンサルはターゲットにし、その内容にまで口を出す。
表現の規制について、以前から言っているように、フィクションの内容が差別的かどうかを判断することは非常に難しい。殺人シーンがあるからと言って、殺人を助長するとは単純には言えないように、フィクション内の描写がすぐさま現実に影響するとは言えないし、表面的な差別的言動がただちに否定されるべきでもない。よって、そこに踏み込むことは慎重であるべきです。
しかし、ほとんどの人が合意できる範囲であれば、そもそもコンサルを必要とはしない。対して、表現の場合はどこに難癖をつけられるか予測できず、予測できるならそれに越したことはない。ここにコンサルが入り込む余地があります。
マナー講師が、マナーとは言えないものをマナーに仕立てて、「私だけが知っているマナー」を教えることで、教えられた側は「目覚めた私」という優越感を得られます。
ポリコレ・コンサルもこれと同じで、「根掘り葉掘り」「粗探し」「針小棒大」といったレベルで炎上する可能性を挙げていきます。世の中にはポリコレ系炎上趣味の人々がいますから、それらが炎上する可能性が十分にあります。自ら炎上に参加するわけではない企業の広報にも、気づかないところを指摘されると感心してしまうのがいるのだと思います。よーく考えれば、こういう人たちの主張がおかしいと気づけるはずなんですけど、よーく考えないのでしょう。
しかし、今回の「赤いきつね」の騒動で、作り出されたリスクであったことが見えてきて、さすがにポリコレ・コンサルに騙される広報は少なくなろうと期待できます。米国では先んじてスウィートベイビーが「表現にとって何の役にも立たないばかりか、ただただ作品をつまらなくし、売り上げを落とすだけの業界の癌」との認知が浸透してますが、日本でもそういう認識が広がることを願います。
✴︎2023月11月18日付 「PRESIDENT」 「マナー講師うぜー」とずっと思ってましたが、この認識は相当広まっているようです。それでも、ありがたがる人たちがいるので、好きにすればいいと思ってましたが、ポリコレ・コンサルは表現に立ち入ってくるので、害悪です。
アメちゃんが語る日本のタブー
あやふやな感覚だけを根拠にした表現の否定は自由な表現を危うくします。例えば、法律上規制される猥褻物は、もっぱら性器や性行為を表現したものであり、それでも議論はあるわけで、「こじつければそう見えるかもしれないよね」というだけで捕まっていいはずがない。
性差別表現と決めつける際も、そのようなあやふやなものであってはならない。しかし、これで金儲けをしようとする人たちにとってはあやふやである方が都合がいいわけです。
放火系炎上商法コンサル中村ホールデン梨華さんの言い分は、「赤いきつね」のCMに留まらず、あらゆる女性性の表出に適用されるものです。その例としてAD-LAMPのサポーター小島慶子さんの写真を挙げました。「赤いきつね」のCMはフィクションです。対して小島慶子さんは現実の存在です。中村ホールデン梨華さんはなぜ女性性を強調する現実を放置しているのか。批判したって金にならないからでしょう。対して、CMを批判すれば金につながり得ます。
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