ミャンマーの地震・タイの地震・中国の地震と爆発音—震度3で倒壊する建物を建造する中国の国家事業-(松沢呉一)
ミャンマーの地震
3月28日、ミャンマー中部で、マグニチュード7.7の地震。ミャンマーには常駐の特派員がいないためだと思うのですが、地震のすぐあと。各局は、建設中だったバンコクのビル倒壊映像ばかり繰り返し使用されていました。
でも、すぐに「おかしくないか」と思いました。震源地から、バンコクまで1,000キロ離れています。東京を震源地とする地震があって、北海道や九州、さらには韓国でビルが倒壊するようなものです。
地盤によっては、揺れが減衰せずに広がることもありますが、1,000キロ離れて震度5以上の揺れが記録された地震なんて過去にないのではないか。
実際、バンコクでは最大でも震度3程度だったようです。1,000キロ離れて震度3の揺れがあったことでも十分に驚くべきですが、いかにタイでは地震が少なく。免震性が考慮されてないとしても、震度3で倒壊するんじゃ、強風でも倒壊するべ。
完成前の建物は脆弱である可能性もあるのかとも思いましたが、現地でも高層ビルとしては唯一倒壊したこの建物に注目していて、33階建てのこの「州監査庁ビル」は最上階まで基礎構造はすでに完成していたと報じられていて、他の建設中の高層ビルは倒壊していないことからも、「完成していなかったから」との言い分は成立せず。
日本の大林組が施工したビルはガラス1枚破損しなかったことから、「さすが日本」と胸を張っているムキがありますが、いやいやいや、このビル以外、どの高層ビルも倒壊してないので、大林組が特別なのでなく、「州監査庁ビル」だけおかしいって話です。
まもなく中国国営企業中鉄十局が施工していたビルであったことが明らかに。だったらしょうがねえ。屁をこいただけでも崩落するような建物だって建造するでしょ。
✴︎2025年3月29日付「BBC NEWS JAPAN」より
証拠資料を持ち出そうとした中国人4名が逮捕された
「中鉄」は中国中鉄股份有限公司のことで、中鉄十局はその十番目の系列会社。「中鉄」は鉄道や道路建設を主たる事業とし、東南アジアマーケットを狙って、国外初の高層ビルを受注したのが「州監査庁ビル」でした。以下は州監査庁ビルの完成予想図です。
中国ですから、当然、手抜き工事が疑われるわけですが、このプロジェクトの重要性から考えて、国家の肝入りで、中国が持つすべての叡智を注ぎ込んだ結果がこれなのではないか。
一発目からこれですから、ビルとともに東南アジア支配の思惑も瓦解しかねず、在バンコクの中国大使は謝罪メッセージを出し、調査にも協力すると明言。中国なのに迅速で低姿勢です。
ところが、ネット上から、このビルに関する記述はすべて消して痕跡を消し、今なお救出活動が続く崩落現場に残っていたコンテナ(事務所として使用していたよう)から、中国人スタッフが資料を待ちだすところを取材をしていたテレビ局がたまたま発見して、警察に通報し、4名が逮捕されています。
表向きは謝罪しておいて、裏では証拠を隠滅する中国共産党連携プレイを、タイのテレビと警察が連携して阻止。この国は油断は禁物。
取り調べの後、彼らは釈放されています。持ち出そうとした資料は押収したためでしょうが、タイ警察はわざと泳がせたのかもしれない。釈放されたあと、誰と連絡をとって、誰と会うのか。
一民間企業であったとしても、中国企業の背景には中国共産党の意思が存在していて、まして国営企業となれば中国共産党と一心同体ですから、肝を据えて対峙する必要があります。
というか、いかに入札価格が安かろうが、中国の国営企業に官庁の建物を依頼すること自体どうかしてます。建物に盗聴、盗撮機能を仕込むのは容易です。
そこまで至らなくても中国企業に建物、道路、橋梁、鉄道を依頼するなら、地震がなくても、倒壊、崩落、脱線することが前提です。中国に製造を依頼していいのはノートと鉛筆くらい。ゲームの技術も高くなってますが、中国のスタジオに下請けに出した結果は「アサシン クリード シャドウズ」を参照のこと。すべていい加減。
✴︎2o25年3月30日付「ThaiPBS」 隠蔽工作を阻止した件を報じるタイメディア(正確には米公共放送ネットワークのタイ版)。中央の女性が逮捕された一人か。右は通訳ではなかろうか 。→捕まったのは責任者とその部下で、全員男でした。この写真は全員捜査員のようです。
(残り 1475文字/全文: 3312文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ