松沢呉一のビバノン・ライフ

DEIを取り込んだ企業がDEIの理念を破壊した—UBIソフトとディズニー[後編](松沢呉一)

UBIソフトの分社化で投資家も社員も混乱—UBIソフトとディズニー[前編]」の続きです。

 

 

不自然なDEIがUBIソフトを潰した

 

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アサシン クリード シャドウズ」でも、弥助の人間性を象徴する表情が切り抜かれました。

以下の動画のサムネイルがそれ。うまいこといてこました時のエロ顔です。

 

 

 

もともとXで公開された動画のようで、日本語字幕は自身でつけたものです。このYoungRippa59は、音楽制作やコミック制作も手がけているYouTuberです。

なぜUBIソフトが凋落したのかをDEIからわかりやすく説明してくれています。必然として導入されたのでなく、ビジネスのために不自然にDEIが強制的に導入され、正確さ、物語、伝統を破壊したのだとしています。その通りですね。

この辺ついては、「なぜゲーム産業は「歪んだポリコレ思想」に染まるのか—UBIソフトから学ぶ」で説明した通りで、DEIポイントを稼いで投資を促進すべく、記録がほとんど存在しない弥助を主人公にし、ありえない活躍をする。フィクションとしてはそれでもいいとして、「アサシン クリード」シリーズの評価を維持し、かつゼニ集めの真意を隠すべく、「史実に基づいた」「日本の歴史を学べる」とやってしまいました。

 

 

宣伝費を湯水のように使いながら、時代や習俗の交渉には金を使わないUBIソフト

 

vivanon_sentenceYoungRippa59は、「アサシン クリード シャドウズ」を批判する日本人をも「レイシスト」としたことに強い憤りを感じているようです。それが西洋社会の常套手段であり、それを批判する黒人をも嘲笑すると(この部分はもう少し込み入った説明になってますが)。

私もこの点については憤ったことを繰り返してきましたが、ここに来て新規で腹が立ったことがあります。UBIソフトは、発売前後のマーケティングに莫大な予算をつぎ込んでいます。インフルエンサー対策だけでも、日本円で3億円くらい使ったようです。この数字は公開されたものではなく、現実の動きを踏まえて推測したものでしかないですが、インフルエンサーにはそれぞれ数万ドルといった報酬が支払われたのだとして実名まで出てます。

発売前にゲーマーのYouTuberたちをカナダまで呼んでギャラを払ってレビューを書かせ、広告を出してメディアの批判記事を抑え、大量のBOTで「アサシン クリード シャドウズ」のヨイショコメントを垂れ流すなど、金の力でゴリ押しをするUBIソフトのやり方は目に余ります。K-POPアイドルやウェブトゥーンのあざといやり方より規模が大きい分、一層悪質です。

だったらどうしてこの金を日本の歴史や風俗、習俗に詳しい専門家に使わなかったのでしょう。予算の枠が違いますから、簡単に移動できないにしても、どうして最初から予算に組み込まなかったのか。どうして日本文化に疎いとしか思えない人物にだけ聞いて、あとは外注の中国のスタジオに任せればいいと考えたのか。

こういった当たり前の作業より、DEIポイントの方が大事になってしまった企業が消費者から見捨てられるのは当然です。

では、UBIソフトがDEIを正しく理解し、実践しようとしていたのかと言えば甚だ怪しい。これはディズニーも同じです。

 

 

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(残り 2012文字/全文: 3442文字)

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