BUBU’S EYE

ジャックが泣いた日。男子準決勝四日市メリノール学院。京王Jrウインターカップ

京王Jrウインターカップ2024-25

男子準決勝・四日市メリノール学院vs琉球ゴールデンキングス。

サイドA  四日市メリノール学院

34白谷柱誠ジャック

PHOTO BUBU

【ジャックが泣いた日】

4Q、残り9秒

「ジャックが泣いた…」

 

カメラの望遠レンズを最大にして、ベンチの様子をうかかがい、心の中てそう呟いた刹那

隣で試合の映像を撮っていたカメラマンが驚いた表情でまったく同時に思わず声を発した。カメラのモニターにはどアップで映ったジャックの涙が見てとれた。

 

いつも人なつっこい笑顔を絶やさないジャックの涙を見たのは初めてだ。

ボールマンを追いかけたファウルはアンスポ(アンスポーツマンライクファウル)となり、ファウルアウト。

 

ベンチに戻ってきたジャックは泣きながら山崎修ヘッドコーチの隣に腰を下ろして床を見つめた瞬間、山崎先生の目はコートに向いていたが、ジャックに向かって何か声をかけた。

 

次の瞬間、ジャックは顔をあげチームメイトに大声て声をかけた。この切り替えはコンマ何秒。

試合後、山崎ヘッドコーチにあの時なんと言ったのか質問をしてみた。

 

「顔を上げろと。お前は悪くない。ほんとうによく頑張った。ただ、ゲームが終わるまでは泣くな。

ああいうところがいいところで、普通なら孤立してしまう。野球の大谷君でもそうですけど、周りのやつらが幸せになる。ちよっとカッとしたりすることもあるんですけど、ああいう風に気持ちが切り替えられる子なので」

 

白谷柱誠ジャックは、54得点、スリー8/18、19リバウンド、3ブロックショット。スコアはこれまて゛最多の39をあっさり抜いて、男女を通して最多得点記録を更新した。

 

「相手のチームに負けるということは、僕は全然負けだと思っていない。心の中にある弱い自分に負けたりとか、俺は背が小さいとか、能力がないとかいうのが本当の負けだと思うので。
ジャックにとってはいい負けだったと思います」(山崎ヘッドコーチ)

 

さらにこう続ける。

 

「このままでは次の育成年代に行くときに強化という側面だけで見れば、今日のゲームも勝ちかたはあったかもしれません。しかし強化と育成という両面から考えたとき、育成もしたいし、ジャックの強化もあるし、

ジャックに悔しい負けを教えてあげることも僕の仕事かなと。だから終盤、逆転が難しいかなと思ったときに、ジャックが悔し涙を流せるようなシチュエーションを持っていったつもりです」

 

コーチは試合中にも瞬時のひらめきと選手たちの将来を同時に考えているのだ。

 

4Qのジャックの追撃モードは凄まじかった。まずはけっしてセルフィッシュではない。とかく、こういう図抜けた選手がいるとチーム内で孤立してしまったり、浮いてしまうことも多い。

 

「全部ジャック自分でいっていい」
山崎先生はジャックの背中を押した。

 

去年までは、先輩たちがいたから影の力になって謙虚にリバウンドやディフェンスをやっていた。しかし、今年は中学ラストイヤー。「今年はすべてのことをやっていい」と、それこそボール運び、スリーポイント、リバウンド、ドライブとオールラウンダーぶりを発揮した。

 

中でも見てて驚いたのは、重心が安定して動きがスムースに滑らかに見えたこと。
山崎先生が最も危惧していたのは3年間ケガをさせないこと。これは簡単なようで難しい。

「バスケットを嫌いにさせたくなかった。
僕も3年間、彼と一緒にバスケットボールをやれて幸せでした」

 

「得点よりも勝利が欲しかったです」(ジャック)

63-80でチームは敗退。
明日の3位決定戦がジャックの中学ラストゲームとなる。

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