2023年のドラフトは本当に豊作なのか?gradeで見定める今年の候補の可能性。

メジャーリーグscouting report
ドラフトまで1週間を切った。広島が1位指名選手を公表するなど本番へ向けて各球団の思惑が少しずつ明らかになっている。
広島が1位指名に挙げたのが青山学院大の常廣羽也斗投手だった。今年6月の大学野球選手権で最優秀選手にも輝いた右腕だ。安定感のある投球が持ち味の投手で文句なしの選択だと言っていい。常廣はそれほどの逸材である。
毎年、ドラフトになると「豊作だ」「不作」だなどと伝えられるが、こういった評判はほとんど当てにしないほうがいい。「逸材が揃っている」といっても、年度によってレベルの高低があり、どの水準で語っているのはしっかり見分けなかればならないからである。
1位だからといって痛い目にあう可能性もあるし、逆も十分にありえる。大事なことは各選手たちの将来的な最大値を認識するかであろう。
例えば、メジャーリーグではgradeという形で選手の価値が見定められる。
gradeとは80を最大値にして「世代を代表する選手(投手)」70「チームの中心選手、オールスター、ローテーションの1番手」60「不動のレギュラー、ローテーションの2番手。絶対的なリリーバー」55「平均以上のレギュラー、ローテーションの3番手、勝ち継投のリリーフ」50「平均的な選手、ローテーションの4、5番手」45「下位チームのレギュラー、上位チームのローテーション5、6番手」40「下位チームのレギュラー、下位チームの5、6番手」30「控え選手」20「2軍レベルの選手。1軍に満たない実力」。
つまり、今年のドラフト1位候補選手のレベルが、このgradeのどの位置に値するのかが重要なのだ。
豊作だといっても、目玉選手の最大が50程度で争っているものなのか、80クラスのものなのかで大きく異なる。だから、豊作だからといって安心をしてはいけない。もちろん、grade「80」の選手は昨年獲得しているから、今季は60でいいと考える手も悪くはない。
今年の中で80クラスなのか、全世代を見比べての80なのか。記事にはそういったことは記されない。今年のレベルをどう見るかは極めて重要と言えるだろう。
では今年はどうなのか。
すでにあらゆる報道で「豊作」と称えられている。確かに実力が似たもの同士が近くにいるのは事実だ。しかし、彼らが高校3年生だった頃、2019年のドラフトと比べるとスケールは下がる。佐々木朗希(ロッテ)や宮城大弥(オリックス)ら80の選手やその近辺が多くいたことを考えるとそこまでのレベルがあるわけではない、というのが今年だ。
だから表現が難しいのだが、不作というわけではなく、かといって豊作というわけでもないレベルだ。
僕の印象では70、80はいない。。青山学院大の常廣がその可能性をやや秘めているが、それ以外の選手は40~55だろう。といっても、平均的なチームのレギュラーなのだから十分な選手たちだ。ただ1位候補選手に20程度に沈むそうな選手も潜んでいるので、そこは気をつけたいところだ。
ドラフトの豊作報道には振り回されてはいけない。その上で、どうgradeを設定して指名順位をつけていくのか、スカウトの腕が試される楽しみなドラフトであることは間違いない。(文・氏原英明)