「より強度で確度の高い日本一の育成。そして常勝軍団」。秋元宏作ファームディレクターが語る将来ビジョンとプランニング。第4回インタビュー【特集 ライオンズは変わるのか】

球団提供
選手・指導者としてチームを支えてきた秋元宏作氏がファームディレクターに就任したのは2022年。長く縁の下の力持ちのように裏でチームを支えてきた秋元はファームの環境づくりに専念。目指しているのは「日本一の育成環境」と語る。それは施設ではなく組織としての意味だ。長くチームを見てきたからこその視点で秋元はチームを盛り立てている。(取材・文 氏原英明)
――秋元さんは2022年にファームディレクターに就任されました。その時はどんなイメージをされていましたか。
秋元 私は2021年に1年間ファームのバッテリーコーチをさせていただいておりましたので、コーチングの研修を受けていました。その時にこれからプロ野球の指導者としてやっていくために必要なことを理解しましたので、2022年からもそれを継続した中でより良い選手を育成していくには指導者がスキルアップしないといけないと思っていました。
――以前までは選手が引退してそのままのコーチになって指導をするのが当たり前でした。コーチ研修を経験されて改めて感じることがありましたか
秋元 横浜と西武でコーチはさせていただいたんですけど、自分のコーチ経験を振り返る中で手とり足取り全部教えなくても選手が育つ環境が作れればというのは思っていました。もちろん指導しないとかそういうわけではなくて、選手自らが前を向いて成長していけるような、そういった指導をやっていかないといけないなと。グラウンド上で情熱のあるコーチングは大切だと思うんですけれども、これからの時代それだけではいけない。選手たちが色々なものを取り入れながらやっている中で野球界も変わっていかないといけないなと思っていました。
――ファームディレクターとはどんな役回りを意識されていますか。
秋元 横連携という部分において、コーチたちや選手だけでなくスタッフたちと意見を言い合える組織にしていくことです。現場というと監督とコーチがトップという印象があって、トレーナーやバイオメカニクスの担当、スコアラーなど周りの部門の人たちはどちらかと言えば現場のサポート的な立場になりがちでした。そうではなくて選手を育成するにあたってグループにいる全員がきちんと横連携しながらコミュニケーションを取って選手を育成していく。みんなでやっていきましょうということを最初に話をさせてもらいました。
――実際の育成に関しては、最近では数値を導入したりしますけど、どうやって打つ、どうやって投げるなどがメインだったところからの変化はありますか。
秋元 去年と今年の2年間で、特にフィジカルの部分はS&Cコーチたちと連携を取りながら練習の割合やスケジュールは現場のコーチたちも取り入れるようになりました。トレーナーやバイオメカニックスの担当の意見がメニューに入るようになり、特に投手の方は 今年1年でかなり進んだなという印象です。以前は担当のコーチが選手の技術指導から体力まで全てを見るというような練習のスタイルだったんですが、ある程度の役割分担しながらやってもらえるようなってきたと実感しています。
――ピッチャーで球速が課題にあるとしたらコーチがこのトレーニングをしろという風な働きかけだったのが、変わってきたということですか。
秋元 そうですね。実際はグラウンドでの強化メニューはピッチングコーチが課していたんですが、フィジカルの専門家がいるので、その意見も十分に聞く。例えば球速を上げるのにきちんとトレーニングが必要だとなると、どこをどういう風にトレーニングしたらいいか、何かいいものがあったら教えてくれないかとか専門家に投げていく。今年はS&Cコーチやバイオメカニクスが関与する部分は増えたのかなと。
――やはり数値など明確にした方は進みやすい。
秋元 いわゆる見える化ですね。どこがどう強くなったの?どう速くなったの?どう大きくなったの? 何が変わったの?という数値を出すことで見えてくる。選手もコーチたちも実感できる部分があり、数値の変化がスキルに対してどういう影響を与えていくのかも見えるようになるので、そこは進めていきました。
――スピン量を上げたいことに対してトレーニングをS&Cと相談。その成果を見える化して選手に納得してもらうイメージですね。
秋元 トラックマンやラプソードがこれだけ普及してくる中で選手たち自身も実際プロに入る前からそういうものに触れているということが多いですね。やはりその辺はコーチたちの方が関わりが薄かったり理解しきれていない部分もあったので、一緒に関わることでコーチたちも知識を得ながら自身のスキルアップ、選手と一緒に成長していくという形になってきましたね
――榎田大樹、武隈祥太さんなど元選手がバイオメカニクスの部署にいたのは特殊な役割もしていたんでしょうか。
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