限界突パ

今季初勝利を挙げた西武・渡邉勇太朗に芽生えた自覚。響いた指揮官の言葉。

シーズン100敗も危惧される声をよそに代行指揮官はいたって冷静だ。

「以前に追い上げた時に比べて試合数はたくさん残っているし、怪我人も多い状況だからね。みんなが帰ってきたら、また変わってくるし、打線の方もどん底の状況からは抜け出している感じはある」

59歳となる今年、2度目となる指揮をとっている西武・渡辺久信監督代行はやけに落ち着いている。「フィティングポーズを取る」と強気な姿勢を示す一方で、チームに何かを残していきたい気概さえ持ちながら采配を振るっている印象だ。

5、6回での降板が定石だった渡邉勇太朗を7回まで引っ張り「勝てる投手になるためには長いイニングを投げなければいけない」と期待を託す発言をする時もあれば、懲罰交代させた選手を翌日もスタメン起用し、結果で答えろと力を引き出してみたり。一方、主力投手の1人、高橋光成にはこのクラスの投手なら続投するだろうという試合展開でもあっさり交代させ、試合後は「脆い」と奮起を促したりもする。選手の性格や今の立ち位置を見抜いて、様々な手法で人を育てようとする。敗戦をしても爪痕を残すような采配をしている。

 その中で、ひときわ成長の跡を見せている選手の1人が渡邉勇だ。

 開幕ローテーションこそ逃したものの、5月18日に今季初先発を果たすと、6試合に投げて防御率3、03と高水準をマーク。前回登板の日本ハム戦では今季初勝利を挙げた。

 ストレートの最速は153キロをマーク、強きに押していきながら、スライダー、フォークで打ち取っていく。渡辺久信監督代行は「今までだと3回が終わったくらいにガクッと球威が落ちるけど、今はそれがない」と成長ぶりに目を細めている。

 投げているボールの質が良くなっているのは間違いないのだが、それ以上に安心感を与えるのがローテーション投手としての自覚だ。今季初勝利を挙げた試合後、こんな言葉を口にしている。

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