「責任逃れの監督では勝てない」。2年目の指揮官に導かれキャリアハイに挑む━━大分南(前編)
1983年の開校と同時に創部された大分南野球部。近年は2013年春、2015年秋、2019年夏に8強入りしているものの、学校のキャリアハイは創部翌年に4強進出の快進撃を演じた1984年夏までさかのぼる。
今年の野球部はその4強を突破し、学校の歴史を塗り替えようと奮闘中だ。今春は1回戦で大分西に2-4で敗退しているが、今秋ドラフト候補の佐伯和真を擁し今夏もシード校に名を連ねている津久見を初戦で下すなど存在感を示した。
チームを率いるのは就任2年目を迎えた安部泰昭監督だ。福岡市出身で、福岡高では主に遊撃手、九州大では捕手としてプレーした。大学時代は主将も務めている。捕手出身ということもあり、試合中も「ここで相手は仕掛けてくるぞ」、「こういう時にはバッターはこんなことを考えているからな」と、捕手目線でのアドバイスを送ることが多い。
指導経験はすでに10年を越え、大分舞鶴、高田、竹田で部長を歴任。そして2023年春に赴任した大分南で、初めて監督の座に就くこととなった。
わずか2本の新基準バットでマルチ得点を狙う
「自分は堅いタイプの人間なので、奇をてらうような野球はできません。当たり前のことを、当たり前のようにやっていく。だから結果的に、ロースコアの試合になっていくし、私自身もそういう試合の方が好きですね」
今年のチームは最速139㌔右腕の大西祐太(3年)が安定しているため、昨秋以降は「3点以内に抑えて、3点以上を取る野球」を目指してきた。そうは言っても、安部監督と大分南は決してスモールベースボールに固執しているわけではない。今季は「飛ばなくなった」と言われる新基準バットが導入され、実際に外野の頭を越す打球が減っている中で、チームはむしろ攻撃に“スケール感”を求めている。
「打球が飛ばないからと言って、こつこつバントをしていこうということではなく、間を抜く打球で“打ってチャンスを広げる攻撃”を目指しています。今の野球は、いかに走者三塁の状況を作るか。バントだけでは、ひとつずつ進めても二死三塁ですからね。だから1点を取りに行く野球よりも、2~3点を取りに行く野球を目指そうという話はしています」
たしかに3月、4月は新基準バットに苦しめられた。まず、練習しようにもチームが持つ新基準バットはわずかに2本のみ。ただ、ここへ来て打球が外野を割っていく確率が徐々にアップし、外野の頭上を越える打球も明らかに増えてきた。だから、バントをしないからと言って、決して奇をてらっているわけではないのだ。
「能力が上がったというよりも、考え方が良くなったということだと思います。もちろん練習を重ねながら芯で捉える確率は上がってきましたが、それ以上に選手の間でも低い打球で間を抜くという意識が強くなってきました。チームとして徹底しているのは、スイングの軌道を確認していく中で、よりコンタクトするポイントを体に近づけようということです。先で打ってしまうと、どうしても打球の勢いは死んでしまいます。だからボールの内側をしっかり捉えて逆方向へ持っていく。この感覚を、連続ティーをやりながら体に染み込ませていったのです」