九ベ! ——九州ベースボール——

横綱相手に四つ相撲を挑んだ夏━━あと一歩の壁②大分舞鶴・河室聖司監督(前編)

大分大会の準優勝は、県立進学校の大分舞鶴だった。
2022年センバツに21世紀枠で出場した大分舞鶴は、2020年代に入り安定した成績を残し続け、独自大会となった2020年を含め、夏は5年連続で4強以上に進出。
決勝進出にかぎっては5年間で4度(独自大会含む)という、おそるべき“連対率”を誇っている。
裏を返せば、常に「あと一歩」の壁に跳ね返され続けているということだ。現在の大分県は、今年で4連覇を達成した明豊が夏を勝ち続けている。そのうちの3度、大分舞鶴は決勝で敗れ、昨年は準決勝でも逆転で王者に屈した。
準優勝校監督の本音と現状に迫る好評企画。今回は誰よりも「あと一歩」の重さを痛感しているであろう、大分舞鶴の河室聖司監督をフォーカスする。

勝敗をわけた「余力と全力」

━━夏は5年で4度の準優勝。今年も明豊の壁に跳ね返されてしまいました。まずは今夏の敗因からお聞かせください。
「勝ち負けというのは相手があることです。だから私は、敗因を聞かれた時には、いつも『敗因はない』と答えるようにしています。勝ち負けという関係性の中で、相手が上回っただけのこと。相手が強かったと言うしかありません。ただ、試合を振り返った時に、悔やまれるのは9失点を喫した6回の守りですね。残念ながら守備のミスが重なってしまいました。明豊との試合では、守備のミスと四死球は命取りになると分かっていながら、この回だけで3四球に2失策。ある程度の失点は覚悟していたとはいえ、ビッグイニングは想定外でした。今年はある程度戦えるという手応えがあっただけに、あの回を1、2点に抑えていれば、という思いはあります」

━━4年間勝てていない(昨年は準決勝で対戦し1-2で逆転負け)ということで、力の差は感じていますか?
「圧倒的な能力差、戦力差がある中で、明豊は“打つ、投げる、走る”のスペシャリストがしっかりしています。決勝まで行く過程を見ても、ウチと明豊とでは対照的でしたよね。ウチは準決勝でエースの秋田康介が150球近くを投げ、なんとか4点差を逆転してという、ギリギリの決勝進出でした。一方の明豊は3試合でコールド勝ちしているように、余力を残して勝ち上がっています。ウチのような公立校の場合、余力を残して決勝を戦うということ自体が極めて難しいと言わざるを得ません。ただ、それぞれの学校の在り方が違うし、こちらはいろいろと制限の多い中で練習をしてきましたが、やれることはやってきたつもりです。しかし、先にも述べたように、今年は充分に戦えるという手応えを感じていました。今まではいかに“蹴手繰り”を仕掛けようかと考えていたのですが、今年に関しては四つに組みに行きましたからね。結果については、繰り返しますが相手が強かったと言うしかありません」

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