九ベ! ——九州ベースボール——

横綱相手に四つ相撲を挑んだ夏━━あと一歩の壁②大分舞鶴・河室聖司監督(前編)

「守りの舞鶴」というオプションを

━━今年の準優勝という結果を受けて、突き付けられた課題は何だったのか。そして、今後に向けて見出した収穫を教えてください。
「私たちのような進学校の場合“投・攻・守”のすべてが揃うということは、まずあり得ません。その中からどれかに特化しようということで、これまでは“攻”を中心にチームづくりを行ってきました。試合では攻撃重視のオーダーを組むため、エラー覚悟の選手が数名スタメンに名を連ねることもありました。エラーしても攻撃で取り返せばいい、という発想ですね。甲子園に行った代ですら、そういうチームでした。ただ、今年の夏は守りの部分で負けてしまいましたから“守備に対してより意識を高く持とう”というところからスタートしたのが今度の新チームです。また、新チームからは走塁にも力を入れています。先日も生徒には『前のチームと比べて、ランのサインを3倍に増やす』と伝えました。その後の練習試合でも、これでもかと走りましたからね。収穫という意味では、大分大会の決勝で最速147㌔の野田皇志投手から6点を取ったことですね。今年の大分県はとくに140㌔超の好投手が多かったので、冬の間からマシンを140㌔以上に設定して打ち込んできました。その成果を最後に見せてくれたことは、チームにとって非常に大きかったと思います」

━━新チームは決勝で敗れた翌日から始動したと聞きました。次の代はこれまでベンチ経験のない選手も多いようですね。
「決勝戦の翌日から、さっそく紅白戦を行っています。また、ウチはB戦をフレッシュ戦(F戦)と呼んでいるのですが、F戦は1・2年生だけで編成したチームで毎週試合を行ってきました。1年生でも夏までには40打席を確保しています。だから、新チームになってからの紅白戦や練習試合でも、経験不足を感じることはまったくありません」

━━毎日の練習メニューはどのように組んでいらっしゃいますか?
「この夏は危険な暑さが続いていることもあって、練習は午前中にかぎられています。生徒は朝7時半にグラウンドに来て、実質8時過ぎからキャッチボールを始めます。キャッチボールの後はケースノックを含めた守備練習。その後はピッチャーやマシンを相手にしたケースバッティングです。その後はフリーバッティングを行い、だいたい時間を使い切るといったところでしょうか。11時過ぎには練習を終えてグラウンド整備。12時が完全下校です。中身を少々変えることはありますが、夏休み中は基本的にこの流れを変えていません」

━━中身を変えるというのは、ケースノックやケースバッティングにおけるランナーの状況やアウトカウントをアレンジするということですね。
「そうです。これはもう、年間を通じて取り組んでいる練習です。たとえば一打サヨナラの場面を守り切る。その逆で、ヒットを打たなければ終わらない。こうしたプレッシャー練習を続けることで、みんなが本番で勝負強さを発揮してくれるようになりました。専門のトレーナーや栄養士の指導を受けながらのフィジカル強化にも、年間を通して取り組んでいますよ。その成果も、今後はさらにあらわれてくると期待しています」

つづく

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