甲子園直前にぶつかり合った「選手の不満と監督の葛藤」 鳥栖工②
良い選手はいる。善戦もする。しかし、勝ちきれない。夏に向かって下降線を辿る……。
そんな鳥栖工の“伝統”ともいえる体質を改善するため、大坪慎一監督は多くのミーティングを実施。多ジャンルの成功者からもヒントを得ながら、野球脳の強化に努めてきた。
しかし、甲子園に出場した2023年のチームは、春先に空中分解の危機を迎えていた。いや、すでに空中分解していたと言っていい。
そんな危機的状況を迎えた大坪監督は、2009年夏に伊万里農林を甲子園に導いたある方法を思い出し、導入を決定。その結果、指揮官の中にかすかな変化が芽生え、チームの劇的向上にも繋がっていくのである。
“ギリギリイレブン”のボイコット事件
「昨年の春、あまりに僕が厳しく言うものだから、子供たちの心が離れていってしまったのです。僕自信が焦っているんですよ。伊万里農林で甲子園に出た時に、ある人から言われた『早いうちに2回目(の甲子園に)行っとかないと、なかなか厳しくなるよ』という言葉が、どんどん僕の焦燥感を煽っていったんですね。下級生の時に抜擢した子供たちが最上級生になっても、秋春ともに初戦敗退。春は佐賀北に14失点です。“え、もう夏が終わっちゃうよ”と思ってしまって『もう無理、無理。君たちでは無理だよ』、『もう次の代に譲ったらどうだ?』というようなことまで口を突いて出てしまいました。今にして思えば、完全に焦燥感に押しつぶされていましたね。そんな時、部長の田口雅敏先生が『大坪先生、選手たちの心が折れていますよ』と言ってくれて、目が覚めたのです」
大坪監督の脳裏に、伊万里農林で監督生活をスタートさせた頃の記憶が蘇る。
当時の部員はわずかに11人。部員確保に苦労していたチームにとっては、じつに貴重な“ギリギリイレブン”だった。ところがある日、彼らは忽然とグラウンドから姿を消してしまったのである。
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