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【社会人野球レポート】上田硬式野球倶楽部が創部 誰もが野球を楽しめるチームを目指して③

高校野球未経験の山﨑投手が、上田倶楽部から北海道の独立リーグへ

【レポート】ライター山﨑竣

高校時代は帰宅部、本格的に硬式野球を始めて4年目のシーズンで海外リーグ挑戦を決断した投手がいる。今年の春に長野大学を卒業した山﨑惇平投手(23)だ。ブランクを経て、なぜ再び野球に目覚めたのか。新型コロナで振り回されながらも新たな挑戦の場が決まった山﨑選手に、火が付いた野球への思いを聞いた。

山﨑が野球を始めたのは小学3年生の秋。地元須坂市の日野少年軟式野球クラブ、中学では墨坂須高クラブで6年間軟式野球をプレー。ポジションはセカンド。中学時代はほとんど試合に出場できず、厳しい練習に耐えるだけになってしまい野球が好きではなかった。須坂園芸(現須坂創成)高校では、自分の限界を定めていたことや硬式野球へ興味も湧かず野球部には入らなかった。

長野大学に入学後も部活やサークルには所属しなかった。学校生活に面白味を感じることはなく、2年生に進級すると刺激を求めて大学の軟式野球部に入部。

今まで経験してきた厳しい練習を耐え抜く環境ではなく、自分たちで考えて野球に取り組む環境があることを知った山﨑。主体的に取り組む野球に楽しさを覚え、野球にのめり込んでいく。

2年生の秋に、人数が足りなかった硬式野球部の練習試合に助っ人として参加。「そのときのメンバーとの野球が楽しく、このメンバーとさらに高みを目指したくなった」と感じ、同部が連盟に再加盟した翌年春に入部した。

↑ 制球力の良さを生かした山﨑の投球

4年生になると、内野手としてのプレーを継続しつつ、小さいころから憧れていたピッチャーに挑戦。プロ野球選手などを参考にフォームを模索した。自分のイメージとはかけ離れた動きになり、コントロールが定まらず、球速も伸び悩んだ。

長野大・西澤悠コーチなどと体の使い方を学び、「小中学生のころは、(いいプレーができないと)センスという言葉で一蹴されてきた。体の使い方を勉強していく中で、そうじゃないことを知った」と山﨑。理にかなった体の使い方をすることで球速が上がり、守備でも動ける範囲が広がった。リーグ戦でも数試合登板した。

体の構造や使い方を学び、課題と向き合い一つ一つ克服していく。うまくいかなくても探求することに面白さを感じ、さらに野球が楽しくなった。

↑ 小柄な体だけにトレーニングも一層工夫する

大学野球引退後も大学に残り、長野大のチームメイトが中心になって創設した上田硬式野球倶楽部に加入。
選手それぞれが理想の選手像を追い求めるチームだけに、人間性が試されると感じた。「自分の人間性の低さに気付いた。選手としても人としても成長したい」と、自主性を重んじるチームで新たな目標が見つかった。

また、オープン戦や実戦形式の練習では「持ち球をすべて使わない」「球速を落として打者に打たせてアウトを取る」など登板ごとにテーマを設定。結果の良し悪しは意に介さず、ボールカウントの操作を意識して打者との駆け引きを考えるようになった。

大学時代から山﨑を見てきた西澤コーチは、山﨑の投手としての強みとしてピンポイントで狙ったところに投げ、簡単に四死球を与えないコマンド力の高さとペース配分能力の高さをあげている。長いイニングを投げても大崩れすることなく試合を作れるのが持ち味だ。

また野球に取り組む姿勢について、「出会ったころは野球をしたいという情熱だけで漠然と取り組んでいた。上のカテゴリーでのプレーを意識したことで、情熱を持ちつつクレバーに野球そのものを追求するようになった」と山﨑の変化を感じた。

今年の春に大学を卒業すると、大学時代から興味を持っていた海外でのプレーに向けて準備を進めていた。きっかけになったのは、昨年の夏に西澤コーチと訪れたチェコのプロリーグ。帰国後に仲介業者の存在を知り、自身のプレーの動画などを送ると、東欧のセルビア共和国のチームと契約が決まった。

しかし、3月末に新型コロナウイルスの影響で渡航が厳しくなり、セルビアのリーグ戦も開幕が延期。夏以降の渡航に向けて自主トレに励んでいたところ、独立リーグ・北海道ベースボールリーグのレラハンクス富良野BCから誘いを受け、5月下旬に入団が決定。今季の戦いの場は北の大地の新設リーグとなった。

山﨑が理想とするのは点が取られない投手。ストレートの平均は120㌔前半だけに「球速がないので、キレと駆け引きでどう抑えるか考えたい」と課題を認識。目標は通年で防御率3点以内。「海外のリーグでプレーするための下地を作りたい」と海外挑戦への夢を諦めず、北の大地でさらなるレベルアップを目指して腕を振る。

<やまざき じゅんぺい>
1997年3月18日、須坂市生まれの23歳。相森中(墨坂須高クラブ)ー須坂園芸高ー長野大。上田硬式野球倶楽部を経て、北海道ベースボールリーグ・レラハンクス富良野 BCに入団。背番号41。164㌢60㌔。右投右打。

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