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【長野大会コラム】上位争いに絡めなかった優勝候補

第105回全国高校野球選手権長野大会は、上田西の優勝で幕を閉じた。春の県チャンピオンで第1シードでもある上田西の制覇は順当そのものだった。その一方で、上位争いに絡む前に敗退したAシード上位校など優勝候補もあり、あらためて夏の大会の難しさを示した波乱もあった。

その一つが、第2シード松本国際の2回戦(初戦)敗退だ。松国は昨秋、県3位で北信越大会に進出。この春も県2位と1段上がり、堅実な試合巧者ぶりが評価されていた。

↓ 春は県準優勝で、第2シードを獲得した松本国際

打線は渡辺維介主将が不動の4番に座るものの、決して強打を誇る打線ではない。投手陣もエース小森翔の成長が大きく、小森を抑えに置いた継投が勝ちパターンになっていた。坂田精二郎監督が、攻守でうまくやり繰りしながら持ち味を引き出した側面が大きかったともいえる。

松国の初戦の相手は長野吉田。秋、春県大会未出場の吉田に松国は3回までに3-0と主導権を握った。松国の一方的な展開も予想された中、吉田の2番手投手の丁寧な投球に追加点が奪えない。それでも「いつでも何とかなる雰囲気があった」と坂田監督は警戒した。

そして7回の守り。最初のピンチらしいピンチで「1、2点は覚悟したが、同点にされ焦りが出た」と坂田監督。動揺したチームは同点止まりでも立て直すことができず、3-4でサヨナラ負けを喫した。

この試合、登板したのは1年生2人を含む4人。4人目のエース小森がサヨナラを許す結末となった。春も細かい継投で勝ち進んだが、それは柱がいない裏返しでもあった。夏もその不安は解消されなかったが、「春の自信が、夏は過信になってしまったかもしれない」と坂田監督。「あらためて高校生の最後の夏に懸ける思いを感じ、何が起きるか分からないと思った」と就任2年目の夏を振り返った。

ディフェンディングチャンピオンの第8シード佐久長聖も、ベスト8を前にした4回戦で敗退した。相手が、春の県大会1回戦で逆転サヨナラ勝ちしたBシード東海大諏訪と難敵ではあったが、1-1の8回に6連打を食らい6失点と、長聖らしからぬ負け方を喫した。

↓ 初戦を突破し校歌を歌う長聖ナイン

同点の4回途中でエース北井大賀を交替。藤原弘介監督にとって1失点で前半にエースを交替させるのは珍しく、「流れ的に早めに手札を切るしかなかった」。苦しい投手の台所事情がうかがえる。

昨秋は、甲子園経験の野手4人が軸になり県準優勝で北信越に進んだが、県決勝で1-11(松商)、北信越1回戦で2-9(福井商)と失点が多く、バッテリーの整備が課題だった。

甲子園出場の外野手・小泉太陽を投手に専念させるなど手は尽くしたが、この春もそして夏も投手力に劇的な上積みは叶わなかった。捕手も昨秋から固定しきれず、夏は急成長の2年生織田憲信が正捕手として初めて公式戦でマスクをかぶることになった。

藤原監督は、バッテリーに不安が残っていただけに、1、2回の好機(計5残塁)に「勝ち上がれるチームならあの場面で一気に試合を決められた」と、主導権をつかみ損ねた序盤の攻撃を悔やむ。

12年に藤原監督が就任以来、1年おきに県を制覇(20年代替大会を含む)している長聖。その翌年は連覇を狙うが、6度目のこの夏も連覇を逃した。「昨夏の甲子園経験者が残ったが、連覇は難しかった。中学時代にコロナが始まった世代で、時代の変化にも敏感に対応してやっていかないといけない」と、アップデートしながら覇権奪還を目指す。

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