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【コラム】高校オフトレーニングを訪問して

この冬、県内高校の練習を取材してきた。秋の大会に出場した70チームのうち69チームをこれまで「オフトレ訪問」コーナーで連載(秋不戦敗の「北信連合」は追って取材予定)。
オフシーズンのトレーニングのトレンドや傾向を振り返る。

↓ 中信連合は週末、秋は単独出場の南安曇農と合同で練習。立地的にも各校が集まりやすい

2月、3月になって天候が不順で足踏み状態となっているが、暖冬と言える気候だった。例年、南信、特に下伊那、上伊那地域は雪が少なくグラウンドを使える日が多いが、早い時期から〝カミ雪〟に何度か見舞われるなど、この冬のグラウンド状況はいつもほど地域間格差が大きくなかった印象だ。

また、あらためて各校のグラウンド以外の室内施設やトレーニング施設などを見学できた。全般にハウスなど室内練習場は備わっていたが、施設の中身は各校で大きな差が見られた。飯田風越の屋内施設は印象的だった。

大半のチームがこの時期、体づくり、体力強化をメーンに据えていた。昔から変わらないテーマとも言えるが、トレーニングのほかに食事(栄養)、そして休養をしっかり取る意識は高まっている感じがする。

トレーニングでは、ウエトレはすっかり浸透。さらに最近よく耳にするのが、野球の動きにつながるトレーニング。メディシンボールなどの用具を使ったり、自重を使ったりするトレーニングで、上半身と下半身の連動性を高める意図が大きい。股関節や肩甲骨などの可動域を広げたり、うまく使えるようにしたりすることも一般的になってきた。

走ることについてはまちまち。正しい走り方を学ぶチームは少なくない。長距離走は全体に少なく、中距離のインターバル走やダッシュ系が多い印象だった。

多くのチームで外部トレーナーを入れて指導してもらっているのも珍しくなくなっている。

また、スイングスピードやボールの回転数、ウエイトの重量、体重など数値をこまめに測定したり一覧にしたりして、目標設定、意識づくりにつなげているチームも多い。ラプソードやブラストといった最新測定機器を導入しているチームもある。

以前より休養に対する意識は高まっていると感じる。週2日、休養を取るチームもある。また、部活動の指針で土、日曜日のどちらかを休養することになっているが、シーズンに入るとなかなか週末は休めないため、オフの時期は特に日曜日を休養日とする公立校が多い。指導者の教員は平日に練習をオフにしても、学校業務は通常通りあるため、冬ぐらいは完全オフの日があってもいい気がする。働き方改革からも避けられない流れでもある。

休養確保にユニークなチームもあった。松商学園は土日関係なく、5勤1休のサイクルで練習と休みを入れた。これまでの週1回休みより、休日数は増えることになる。赤穂は練習時間の〝フレックスタイム〟制を採用。ポジションや学年別に効率的に練習時間をずらして使っている。

〝飛ばない〟とされる新規格バットへの対策も、この冬の大きなテーマだった。飛ばないだけに、例年以上にティーなどで振り込んだり、根本的な体の強化でウエトレ量を増やしたりしているチームが多かった。

また、これまでよりもバットの芯を意識して、低く強い打球を心掛けていた。打球も変わってくるために、守備側を慣らすためにフリーバッティングなどで守備に就かせるチームもあった。

ティーバッティングはどのチームも行うが、ロングティーや置きティーなどティーメニューは指導者の考え方が反映される。ボールを後ろから投げたり、真上から落としたり、いろいろなティーメニューがあった。硬式球を使えない練習環境や速いボール対策などでテニスボールを使うチームも少なくなかった。

投手は、全体メニューのほかに投手メニューが組まれるケースが多く、野手同様にメディシンを使うなど投球動作につながるトレーニングを採用。冬場に投げる、投げないは、頻度や時期、強度によってチームでまちまちだった。この時期の投球がシーズンに入って、特に夏場に向けてどう影響するのか、注目したい。

また体力強化によって普通に考えると秋の球速を優に超えてくるはずだが、例年見ているとみんながみんな劇的に速くなっているわけでもないので、その要因は気になる。

グラウンドが使えなかったり、気温がかなり寒いこともあったりするが、それでも走者を置いてのシートバッティングといった実戦形式の練習にこだわるチームは少なかった。

強豪と呼ばれる常に上位争いをするチームから、早い段階で姿を消したチームまで見させていただいたが、どのチームも、チーム状況に即して、さらに練習環境に応じてそれぞれに工夫して地道な練習をしていることがよく分かった。こうした努力が何とか春、夏に実を結んでほしいと思った。

そして、各校を回ってあらためて部員減少の深刻さを感じさせられた。

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