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【高校】<監督研修会>動作解析のプロからデータ値の重要性を学ぶ

県高野連は4月15日、諏訪文化センターで県内の監督を対象にした全体会議を初めて開いた。その中の研修会では、大町市出身で國学院大人間開発学部准教授の神事努さん(46)が、「スポーツ科学で支える野球指導~データで導くアプローチ」と題して講演した。

大学でバイオメカニクスを研究する神事さんは、野球の投球動作の解析などを専門とし、野球動作の民間測定施設「ネクストベース」(千葉)では上級主席研究員を務める。県高野連では投手力の向上を図るため11月22日と24日、神事さんによる各校投手の動作解析を計画しており、今回はその前段として指導者に科学的な野球へのアプローチを紹介した。

↓ 恩師でもある県高野連の久保村会長(右)から紹介される講師の神事さん

神事さんは投球動作の解析から、力学的に胸を張るときが一番力(負荷、ボールの重さの約100倍)がかかり、リリース時には0になると説明。「リリース時が一番(力のかかる)のイメージだが、感覚と実数値は合わない」と指摘した。

打撃も同様で、インパクトの瞬間よりもバットを振り降ろす段階の方が力がかかっているという感覚のズレがあり、神事さんは「原因と結果を整理してやらないと、いくらやってもうまくならない」と訴えた。

また測定機器「トラックマン」で取得して投球データから、球速を高めると打ち取れる可能性が増す一方、伸びのないボール、いわゆる「垂れるボール」だとゴロが増えると紹介。ただし、垂れ球がトレーニングで平均値になったため打たれた例にも触れた。

ボールの回転速度は揚力(伸び)に有効だが、回転軸の方向(ジャイロ回転など)で効率の良し悪しに影響することも説明した。

そしてボールの軌道上にある「ピッチトンネル」の重要性にも触れ、ピッチトンネルを通して変化球の変化量などをどのようにデザインするかが、個々の投球設計「ピッチデザイン」につながると解説した。

↓ 科学的データを基に講演する神事さん

神事さんはスポーツ界もDX化が進む中、指導者に対し「主観と客観のズレがはっきりし、理論と実践の行き来が求められる。過去の経験や自分の感覚に固執しない柔軟な思考力が必要になる」と語った。

神事さんは大町高野球部(捕手で主将)出身で、当時の監督が久保村智・県高野連会長だった。また進学先の中京大では、寺沢潤一・県高野連専務理事と軟式野球部で同期のチームメートと、さまざまな縁があり実現した。

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