開かれた新しい領域-改正風営法のシミュレーション 2-(松沢呉一) -2,705文字-
「クラブ閉店の事情-改正風営法のシミュレーション 1」の続きです。
改正によって広がる可能性
今回の風営法改正によって、欧米化されたとも言えます。ダンス営業だけであれば許可がいらない点では欧米と同じです。
この点が理解されていなかったわけですが、欧米のほとんどの地域では、アルコールの販売が朝まではできないため、クラブも朝までの営業はできない。日本が特殊だったのは朝までできなかったことではなくて、ダンス営業が風営法で規制されていた点にあります。
今後は深夜営業をしなければ許可も届けも不要となり、許可をとれば朝までできるのですから、欧米より自由度が高いと見ることも可能です。そう考えるなら、今回の改正はそんなに悪くない。
結果、許可営業の範囲が広がってしまって、ここまで繰り返してきた通り、今まで許可が必要のなかった業態まで許可をとらなければならなくなり、場所によっては許可をとれず、移転、閉店、深夜営業の中止を強いられるなど、よくない点もあるのは言うまでもないとして。
深夜までやらない飲食店がダンスという趣向を取り入れて客を集められる。学園祭でクラブをやろうと、海の家で踊れるようにしようと、届けも許可もいらないわけですから、そういう意味では「ダンス営業を規制するな」という目的は半ば達成されました。
ダンス営業の自由化がもたらすもの
ダンス営業はナイトクラブやキャバレーの独占ではなくなり、どこでもできるものになったわけです。これ自体はいいことでしょう。
新宿ロフトや高円寺パンディットのような場所を高校生や大学生が借りて昼間にダンスイベントをやってもいい。
また、許可を得ることができたライブハウスが深夜はクラブ営業をすることもできます。今までもこういった営業をしていた店はあるわけですが、今後は堂々と展開できます。
クラブの衰退が利用者の年齢に関わっているのだとすると、それをすくいあげる店が出てくるでしょう。
仕事が終わったあと、「メシに行こうぜ」とメシ屋に行く。若いうちだったら、腹を満たしてから「クラブで朝まで踊ろうぜ」となったのが、「明日は仕事が早いから」「埼玉に家を買ったのでタクシーは厳しい」「朝帰りをすると女房が疑うから」「子どもの面倒を旦那が見ているから」といった事情で早く切り上げることになる。
しかし、この時に、いつもメシに行っている小洒落たレストランバーにダンスフロアができれば一石二鳥。「メシに行って踊ろうぜ」ということが今後は可能になってきます。そう簡単にはいかないですが、そこにビジネスチャンスはありそう。
※パンディットのある高円寺北3丁目も許可地域になりそうですが、もともとあの店は深夜営業をやってませんので、なんの影響も受けそうにない。騒音問題があるので、深夜営業はやりにくく、許可はとらないでしょう。それでも早い時間帯にダンスイベントをできるようになります。
教訓。
今回の改正では、クラブ自体が減るのと同時に、ダンス営業が広く自由化されたわけです。一部の店が潰れるのだとしても、ライブハウスは淘汰されて、残った店は「ライバルが減って楽になった」ということになるのに対して、クラブはそれがなく、今まで以上に全体が厳しくなる可能性が高い。
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