松沢呉一のビバノン・ライフ

どう対抗していくべきか-ゲイバー摘発を受けて 1(松沢呉一)-2,196文字-

 

ボックス席とカウンター席の違い・法と運用の違い

 

vivanon_sentence摘発された新宿2丁目のゲイバーはボックスで同席しての接待だったようです。警視庁は、ゲイバーの多くが無許可であると見なしているわけですけど、今の段階では、なおここに一線を引いているのかもしれない。

ボックス席のあるお店では、従業員が同席しないように注意した方がいいでしょう。カウンターで横に腰掛けるのもやめましょう。「あら、お久しぶり」と言って股間を揉むのも控えた方がよろしいかと思います。着衣であっても、体に触れると無条件に接待と判断されそうです。IMG_3825

しかし、ここで留まる保証はありません。

今回のことで、「ボックス席で接客をしなければいい」と書いている人、あるいは「それは間違い」と書いている人のどちらもいますが、カウンター越しでも接待が成立することは、ガールズバーの摘発を見れば一目瞭然だし、同席をせず、カウンターもないのに接待が成立することはメイドカフェの摘発を見れば一目瞭然です。いまさら議論をするようなことではありません。

ここまでにも繰り返してきたように、半世紀以上前から警察庁はそういう方針を打ち出し、公表もしています。古い風営法の資料でも探ってみるとよろしい。右の書影は『踊ってはいけない国、日本』掲載の拙稿で使用した資料です。ここにもそう書かれています。遅くとも昭和34年の改正時にはそうなっていたわけです。

しかし、つい数年前までカウンターでの接待を容疑として摘発された例は稀でしたから、「ボックス席で接客をしなければいい」というのは、警察の運用を踏まえた対策としては間違いではありませんでした。しかし、それも意味を失いつつあります。今もなおそこに一線が存在していることが今回の摘発でも見てとれますが、もはやその一線はないとした方がよさそうです。

 

 

すべては規定路線の通りに進んでいる

 

vivanon_sentence今までカウンター越しの接待がひっかかったのは、別件で適用されたと見なせる例です。たとえば売春、薬物、暴力団などの捜査をするためです。

ガールズバーにしても、当初は「指名がある」「女子中高生を雇っている」など、プラスアルファがあった場合にカウンター越しの接待に目をつけられけたのですけど、数年の間にこれが外れて、ただ話し込んだだけでも適用されており、さらには経営者や店舗責任者だけじゃなく、接待をした従業員も逮捕されるようになっています

それらも報道されていないだけで、背景には別の容疑がある可能性も否定はできないですが、これだけの数が積み重ねられてきましたから、「ここまでだったら安心」という線はもうないでしょう。長年の癖で、摘発されると、「暴力団経営じゃね?」「連れだしの売春スナックじゃね?」とつい疑ってしまいがちですが、関係がないのだと思っていた方がよさそうです。

「目立つところから先にやる」「悪質なところから先にやる」という傾向は今もありますから、先にやられないように対応することはできるとして、ガールズバーでやられてきたことはすべて他に拡大していくと見ておいた方がいいと思います。

オリンピックを控えた浄化の一環という見方はあり得るのですが、それにしても、警察はムチャクチャやっているわけではなく、警察なりの節度(あくまで警察なりの)や筋道があって、オリンピックとは無関係に、「このままだとこうなる」と私が言ってきた通りに進んでいます。

これも『踊ってはいけない国、日本』の拙稿をお読みください。2012年7月にあった二丁目のゲイバーが摘発された件についても触れていて、カウンターの店もすでに射程に入っていることを指摘しております。

つまりは、オリンピックの影響があるのだとしても、その流れに加速がついたってことでしかないのだと思います。

 

 

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